バイオ由来製品の実用化に向け、産業用物質生産システムの実証14件に着手
―バイオ産業の裾野拡大や炭素循環型社会の実現を目指す―
2021年7月7日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
NEDOは「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」の中で、このたび産業・社会に有用な物質のバイオ生産システム(産業用物質生産システム)の有効性を実証する14件の研究開発を採択しました。野生植物に原料を依存する医薬品・化粧品・ヘルスケア製品などの有効成分の発酵生産による工業化を目指すテーマや、繊維・樹脂素材であるポリアミドやポリプロピレンのバイオ化を目指すテーマなどに着手します。これらの研究開発を推進し、バイオで実現できる高付加価値機能の創出や、化石資源を含む天然資源への依存低減などにつながるバイオ由来製品の実用化を加速させます。
これにより、バイオ産業の裾野拡大や炭素循環型社会の実現に貢献する製品の創出を目指します。
1.概要
植物や微生物などの生物を用いて物質を生産する技術(バイオものづくり)は、従来の化学プロセスに比べ、省エネルギーであるとともに、原料を化石資源に依存しないバイオマスからの物質生産も可能であるため、炭素循環型社会実現・持続的経済成長に導くものづくりへの変革が期待できます。一方で現状の技術ではコストに見合わないため、民間企業での研究開発や投資が促進されにくい状況です。
そこで国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、バイオ資源の活用を促進する各種技術や従来法にとらわれない次世代生産プロセスの開発に取り組み、バイオものづくり産業の基盤を創出するとともに、産業・社会に有用な物質のバイオ生産システム(産業用物質生産システム)の実証を通じてバイオ由来製品の創出を加速させることを目的に「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発※1」を2020年度から推進しています。
2021年度は「研究開発項目[3]産業用物質生産システムを実証」の研究開発を支援するための公募を行い、このたび14件のテーマを採択・着手しました。例えば、植物由来微量成分の獲得を発酵生産に転換し工業化を目指す技術として、野生植物カンゾウ由来の微量成分グリチルレチン酸を微生物発酵によって生産する技術を開発し、安価な新規生産方法開発を実施するテーマ(住友化学株式会社、国立大学法人大阪大学)に取り組みます。また、化石資源由来製品をバイオ由来に転換することを目指す技術開発として、ポリアミドを100%植物原料に置き換えることを目指し、ポリアミドの原料となる化合物の獲得を微生物発酵による生産に転換し、工業化に向けて単離精製技術※2やスケールアップ検討などを実施するテーマ(東レ株式会社)、ポリプロピレン原料のバイオ化を目指し、バイオイソプロパノール※3を高効率に生産する微生物の取得と発酵生産プロセスのスケールアップ検討などによりCO2削減を実現するプロセス開発を実施するテーマ(Green Earth Institute株式会社)などに取り組みます。
目的物質の生産性向上を狙うとともに量産化を見据えた生産プロセスの最適化などの研究開発を行い、バイオで実現できる高付加価値機能の創出や、化石資源を含む天然資源への依存低減などにつながるバイオ由来製品の実用化を加速させます。
これらの取り組みにより、バイオ由来製品の社会実装加速や新たな製品・サービスの創出を後押しすることでバイオ産業の裾野拡大や炭素循環型社会の実現を目指します。
2.採択テーマ
研究開発に着手する採択テーマ名は以下の14件です。
事業区分 | 採択テーマ名 | 実施予定先 |
---|---|---|
委託フェーズ | 糸状菌が生産する農薬活性天然物の生産性向上システムの構築、実証 | Meiji Seikaファルマ株式会社 |
委託フェーズ | 超耐熱性プロテアーゼを活用した感染制御技術の社会実装実証 | サラヤ株式会社 国立大学法人大阪大学 |
委託フェーズ | コリネ菌によるバイオイソプロパノール生産システム実証 | Green Earth Institute株式会社 |
委託フェーズ | 微生物によるグリチルレチン酸および類縁体の生産システム実証 | 住友化学株式会社 国立大学法人大阪大学 |
委託フェーズ | Bacillus属細菌による抗菌環状リポペプチド生産システム実証 | 株式会社カネカ |
委託フェーズ | バイオプロセスによるイミダゾールジペプチドの効率的生産方法の開発 | 東海物産株式会社 学校法人早稲田大学 |
委託フェーズ | 次世代グリーンバイオ素材「HYA®50」のインライン自動化生産システム開発 | Noster株式会社 |
委託フェーズ | 製紙工場における第二世代糖生産システム実証 | 三菱製紙株式会社 |
委託フェーズ | 生物メタネーションとバイオ燃料製造を可能とする新排水処理プロセスの開発 | 大成建設株式会社 国立大学法人埼玉大学 学校法人中部大学 中部大学 公益財団法人かずさDNA研究所 |
委託フェーズ | エピジェネティクス代謝変換技術を用いた高集積糖生産システムの実証 | アクプランタ株式会社 国立大学法人東京工業大学 学校法人高崎健康福祉大学 |
助成フェーズ | 大腸菌発酵による酸化型グルタチオン高生産技術の開発 | 株式会社カネカ |
助成フェーズ | 天然ヒト型長鎖セラミド高効率生産システムの開発と実証 | 福岡県醤油醸造協同組合 |
助成フェーズ | ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質(PCN-HF)大量生産システムの構築 | ホクサン株式会社 |
助成フェーズ | ポリアミド原料の発酵生産技術開発 | 東レ株式会社 |
【注釈】
- ※1 カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
-
- 研究開発項目[3]:産業用物質生産システム実証
- 事業概要: カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
- 事業期間:2021年度から助成フェーズ最大3年間(最終年度は2月末まで)。
助成フェーズ前に委託フェーズを設ける場合は、委託フェーズ最大2年間。
(最大で委託フェーズ2年間+助成フェーズ3年間の合計5年間) - 事業規模:助成フェーズ 自己負担を含む事業総額 1件当たり 20百万円~100百万円/年度
委託フェーズ 1件当たり 20百万円未満/年度
- ※2 単離精製技術
- さまざまなものが混合した物質から特定の物質を分離して、純度を高める技術です。
- ※3 バイオイソプロパノール
- イソプロパノールはアルコールの一種で、工業用途としては洗浄剤として使用されています。イソプロパノールの主たる製造法は、石油から得られるプロピレンの加水分解によるものですが、バイオイソプロパノールは、植物由来の糖を原料として発酵法で製造したイソプロパノールです。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 材料・ナノテクノロジー部 バイオエコノミー推進室 担当:林、伊藤(雅)、小笠原
TEL:044-520-5220 E-mail:bioproduction@ml.nedo.go.jp
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、鈴木(美)、橋本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp