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小規模地熱発電事業者向けに事業支援ツールを開発
―事業性や運転効率の見える化で事業収益向上に寄与―

2021年10月5日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
一般財団法人電力中央研究所
一般財団法人エンジニアリング協会

NEDOは地熱発電の普及を目指し、2013年度より「地熱発電技術研究開発」に取り組んでいます。その一環としてこのたび、(一財)電力中央研究所と(一財)エンジニアリング協会は小規模地熱発電事業の設備の最適な運転管理を支援するツール「GeoShink™(ジオシンク)」と、収益向上を後押しする「事業性評価支援ツール」を開発しました。

「GeoShink™」は、対象設備全体の熱効率解析にかかる労力を大幅に削減し、機器や配管単位での対象設備の健全性評価を実現します。「事業性評価支援ツール」は、事業収支の観点から設備の点検・修理時期を最適化するとともに、点検情報やトラブル事例をデータベース化することにより、関係者間での部品調達などの最適化、トラブルの再発防止などに寄与します。

これらのツールによって事業性や運転効率を見える化することで、従来コスト面の課題から大規模事業者と同等レベルの運転管理が困難であった小規模事業者でも事業収益を向上させる効果が期待できます。

1.概要

再生可能エネルギー導入拡大が望まれる中、地熱は太陽光や風力と異なり安定したエネルギー出力が得られるため、ベースロード電源としても注目を集めています。特に日本は世界第3位の地熱資源ポテンシャルを有しており、地熱発電技術の開発に大きな期待が寄せられています。

このような背景から、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2013年度に「地熱発電技術研究開発」事業を立ち上げ、地熱資源の利用拡大につながる技術開発を実施してきました。

今回、そのテーマの一つである「IoT-AI適用による小規模地熱スマート発電&熱供給の研究開発」(2018~2021年度)において、一般財団法人電力中央研究所(電中研)と一般財団法人エンジニアリング協会(ENAA)は小規模地熱発電※1事業の最適な運転管理を支援するツール「GeoShink™(ジオシンク)」※2と、収益向上を後押しする「事業性評価支援ツール」を開発しました。

「GeoShink™」は、IoT技術を活用しバイナリー発電※3設備を一元的に状態監視します。電中研が開発した発電プラント向け熱効率※4解析ソフト「EnergyWin®」※5と連携することにより、機器などの異常予兆を検知するとともに、最適な運転管理を支援します。また、「事業性評価支援ツール」は事業収支を見える化する機能と設備の点検・修理時期の検討など最適な運用をサポートするシミュレーション機能により、地熱発電事業の収益向上を支援します。これらのツールは地熱発電のほか、バイオマス発電※6や廃熱発電※7などにも使用できます。

従来、小規模発電事業者は、コスト面の課題などから大規模発電事業者と同等の運転管理が困難なため、発電所の事業性や運転効率、各データの変動、異常の兆候などは感覚的あるいは定性的な把握にとどまっていました。しかし今回開発したIoTを適用したこの支援ツールを導入することで、これらを具体的な数値やグラフとして見える化することができ、事業収益の向上が期待できます。

2.今回の開発成果

【1】運転管理支援ツール「GeoShink™」

〈特徴〉

井戸下から1次熱交換器、バイナリー発電設備に至る地熱発電設備全体を一元的に状態監視します。さらに、電中研が開発した発電プラント向け熱効率解析ソフト「EnergyWin®」と連携することで、機器などの性能値を解析して異常予兆を検知します。また、プラントシミュレーター※8を活用することにより最適な運転管理を支援します。

〈効果〉

「GeoShink™」は対象設備全体の熱効率を解析することにより、要素機器から各配管に至る各設備の状態を容易に把握し、遠隔監視(見える化)することができます。また、「GeoShink™」を活用することにより、設備状態の解析にかかる労力を大幅に削減できるだけでなく、井戸や大気条件の影響を加味した上で、機器や配管単位で対象設備の健全性を診断することが可能となります。

なお「GeoShink™」は、地熱発電設備のみならず、バイナリー発電方式を採用しているバイオマス発電設備や廃熱発電設備にも適用可能です。

〈適用可能な発電方式〉

地熱発電(フラッシュ発電、温泉(熱)発電)、バイオマス発電、廃熱発電、温泉(熱)利用事業※9など

  • 「GeoShink™」の遠隔監視フローのイメージ図
    図1 「GeoShink™」の遠隔監視フローのイメージ

〈設備〉

遠隔監視IoT機器(メーター撮影カメラ、データ前処理・変換・解析機能を有した超小型PC)1台を、発電所の現場計器付近に設置します。なお、スマートフォンやタブレット、PCなどのグラフ確認用の端末は別途用意が必要です。

〈本ツール提供方法〉

電中研は「GeoShink™」について高機能化などの改良を検討しており、本改良に協力可能な事業者にはモニター価格(機器などの費用は無償、通信費などの実費のみご負担)での提供を予定しています。

  • 「GeoShink™」のメーター撮影カメラの設置(左)およびIoT機器による監視画面(右)イメージ図
    図2 「GeoShink™」のメーター撮影カメラの設置(左)およびIoT機器による監視画面(右)イメージ

【2】事業性評価支援ツール

〈特徴〉

売電収入や工事費支出など日常の収支確認(キャッシュフローの見える化)や点検・修理時期など運営計画のシミュレーション機能、点検情報・トラブル事例などのデータベース管理機能で構成されています。季節変動を考慮した発電電力量予測式(「GeoShink™」を用いた分析結果の一部)を計算モデルに搭載することで、実運転データがない場合でも売電収入の近似値を算出できます。なお、発電設備の製造元・発電規模・発電方式に関係なく汎用性が高く、Microsoft® Excel®上のツールとして操作できます。

〈効果〉

事業収支の観点から最適な点検・修理時期を提示し、発電事業者の収益向上を支援します。また、点検情報・トラブル事例をデータベース化でき、関係者間での情報共有や予算計画、部品調達などの最適化、トラブルの防止に寄与します。

〈適用可能な発電方式〉

地熱発電(フラッシュ発電、温泉(熱)発電)、バイオマス発電、廃熱発電など

〈本ツール入手方法〉

以下のENAAのウェブサイトより、無償でツールとマニュアルのダウンロードができます。

  • 事業性評価支援ツールのホーム画面(左)およびシステム試算機能(右)イメージ図
    図3 事業性評価支援ツールのホーム画面(左)およびシステム試算機能(右)イメージ

3.今後の予定

電中研とENAAは勉強会やセミナーなどの開催を通じて、これらツールの広報、普及活動に努めます。また電中研は、本事業終了後もさまざまな地熱発電現場で「GeoShink™」によるデータ蓄積を進め、高機能化と汎用性の向上、熱効率解析ソフト「EnergyWin®」とのさらなる連携に加え、AI機能の導入などを検討します。これによりさらに使いやすいツールへ改良し、事業者の収益向上を支援するとともに、地熱発電事業への普及拡大と地熱資源の有効利用に取り組みます。

【注釈】

※1 小規模地熱発電
設備容量が1,000kW未満の地熱発電を指します。
※2 GeoShink™
電中研により登録商標出願中です。
※3 バイナリー発電
蒸気や熱水、温泉由来の熱を、低沸点の媒体(フロン系ガス、アンモニア水、ペンタンなどの炭化水素)に熱交換し、そこから発生した蒸気でタービンを回転させて発電するシステムです。
※4 熱効率
発電システムの性能指標であり、投入された熱エネルギーのうち、機械的、あるいは電気的なエネルギーなどに変換された割合を指します。
※5 EnergyWin®
電中研が開発した発電プラント向け熱効率解析プログラムで、電中研の協力会社である株式会社電力テクノシステムズのサイトより、無償でダウンロードできます。
別ウィンドウが開きます 株式会社電力テクノシステムズ
※6 バイオマス発電
1次エネルギーとして、木質などバイオマスの燃焼熱を利用した発電システムです。
※7 廃熱発電
1次エネルギーとして工場や事業所などから廃棄される熱を利用した発電システムです。
※8 プラントシミュレーター
発電所の各機器の仕様や性能値、井戸条件や冷却水条件などから、パソコン上に発電所の運転状態を再現する「EnergyWin®」が有する機能です。
※9 温泉(熱)利用事業
地熱の蒸気や熱水、温泉(熱)を、浴用、農水産業、冷暖房などに利用する事業です。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 新エネルギー部 担当:石川、長谷川 TEL:044-520-5270

一般財団法人電力中央研究所 広報グループ 担当:林田、藤本
TEL:03-3201-5349(広報グループ直通) E-mail:hodo-ml@criepi.denken.or.jp

一般財団法人エンジニアリング協会 企画渉外部 担当:門脇、地熱プロジェクト推進室 担当:塩﨑
TEL:03-5405-7201(代表)

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:根本、坂本、鈴木(美)、橋本
​TEL:044-520-5151­ E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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