本文へジャンプ

「オープンコミュニティ powered by TRASIO」を設立
―RISC-Vによるオープンなセキュリティ基盤を構築し、安心安全なIoT社会を実現―

2021年10月13日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
セキュアオープンアーキテクチャ・エッジ基盤技術研究組合

NEDOが進める「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」プロジェクトにおいて「セキュアオープンアーキテクチャ基盤技術とそのAIエッジ応用研究開発」を担当しているセキュアオープンアーキテクチャ・エッジ基盤技術研究組合(TRASIO)はこのたび、安全なIoT社会の実現に向けてオープンなセキュリティ技術の普及を図る「オープンコミュニティ powered by TRASIO」を設立しました。

このコミュニティでは、本プロジェクトが2020年に研究開発したオープンアーキテクチャであるRISC-V(リスク・ファイブ)をベースとしたセキュリティシステムの成果紹介や試使用、ハンズオン体験の場を提供します。ここでの活動を通して本プロジェクトの認知度を向上させるとともに、あらゆるユーザーの意見を取り入れることで研究開発成果の最大化を図ります。

なお本コミュニティの設立に合わせ、10月25日にオープンフォーラム(オンライン)を開催する予定です。

1.概要

IoT社会の到来による情報の高度な利活用が急がれる中、ネットワークの末端(エッジ)で中心的な情報処理を行うエッジコンピューティングのように、従来のクラウド集約型ではなく処理を分散する技術の確立が求められています。また、半導体の開発指標である「ムーアの法則」がまもなく終えんするとの見方が強まり、既存技術の延長は限界を迎えつつあります。

これを踏まえ、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は著しく増加するデータの処理電力を劇的に低減させる新たな原理技術を開発するとともに、世界に先駆けてものづくり現場に普及させることを目指して「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発※1」(2018~2022年度)プロジェクトを推進しています。

特にIoT機器を利用したサービスを安全に実現しようとする場合、「サービスを提供する側が想定する正規のIoT機器」か「想定しないIoT機器や正規のIoT機器になりすました悪意のあるIoT機器」かを確実に判断し、正規の機器のみにサービスを提供する手段が必要となります。

こうした中、本プロジェクトに取り組むセキュアオープンアーキテクチャ・エッジ基盤技術研究組合(TRASIO)※2は2020年にRISC-V(リスク・ファイブ)※3をベースとしたセキュリティシステム※4を開発しました。このたび本研究開発成果の紹介や試使用、ハンズオン体験を行う場として、RISC-Vをベースとしたオープンなセキュリティ技術の普及を図る「オープンコミュニティ powered by TRASIO」を設立することとしました。

2.「オープンコミュニティ powered by TRASIO」について

「オープンコミュニティ powered by TRASIO」では本プロジェクトでの研究開発内容を公開することにより、IoT機器のセキュリティ部分の内部構造がブラックボックス化されることなく、実際には何ができて何ができないのか、本当に正しく実装されているのか、といったことを確かめることが可能です。

本オープンコミュニティでの活動を通して本プロジェクトの認知度を高めるとともに、ユーザーのあらゆる意見を取り入れることで研究開発成果の最大化を図ります。これにより、安心安全なIoT社会の構築に貢献します。

<概要>

■設立:
2021年10月13日
■所地:
セキュアオープンアーキテクチャ・エッジ基盤技術研究組合(東京都千代田区神田練塀町3)
■チェアマン:
手塚 悟 慶應義塾大学 環境情報学部 教授
セキュアオープンアーキテクチャ・エッジ基盤技術研究組合 研究開発責任者
■代関:
セキュアオープンアーキテクチャ・エッジ基盤技術研究組合

<主な活動内容>

日本国内の企業・法人など(ユーザー会員)を対象としてRISC-V適用の普及・促進のための各種啓もう活動を実施していきます。具体的には、以下のような活動を計画しています。

(1)
セミナーやフォーラム、活動報告会などの開催を通して、最新の研究成果を開示してセキュリティ新技術を解説します。新技術を実応用に適用するためのガイドを説明します。
(2)
RISC-Vの国際的な標準化団体であるRISC-V Internationalなどに対する標準化提案活動を報告します。

<入会方法や詳細>

オープンコミュニティウェブサイトをご参照ください。

3.オープンフォーラムの概要

「オープンコミュニティ powered by TRASIO」の設立に合わせ、下記の通り開催する予定です。

■名称:
第2回オープンフォーラム
■日時:
2021年10月25日(月)13時00分~17時00分(オンライン配信)
後日オンデマンド配信予定
■内容:
1)
オープンコミュニティについて
2)
TRASIO研究概要
3)
ハードウェア・アーキテクチャ解説 ~SoCについて~
4)
トラストチェーン実現のための鍵管理 ~信頼とは~
5)
エッジデバイスにおけるTRV※5の実装とそれを実現するためのシステム全体像俯瞰
~TEE/TEEPの紹介~
6)
RISC-Vへのソフトウェア移植における課題
7)
TRVが目指す世界
8)
コミュニティ賛助会員による発表
■参加費用:
無料
■詳細および参加申し込み:
オープンコミュニティウェブサイトからお申し込みください

【注釈】

※1 高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発
2030年以降を見据えたポストムーア時代のコンピューティング技術として、既存技術の延長線上にない技術を開発することで高速化と低消費電力化を両立するコンピューティング技術の確立を目指しています。2018~2022年度までのプロジェクトとして三つの研究開発項目に取り組んでおり、その一つ(研究開発項目1)として「革新的AIエッジコンピューティング技術」が実施されています、TRASIOはその中の「セキュアオープンアーキテクチャ基盤技術とそのAIエッジ応用研究開発」を担当しています。
※2 セキュアオープンアーキテクチャ・エッジ基盤技術研究組合(TRASIO)
西澤 格(株式会社日立製作所 研究開発グループ テクノロジーイノベーション統括本部、副統括本部長)を理事長とした株式会社エヌエスアイテクス、学校法人慶應義塾、国立研究開発法人産業技術総合研究所、セコム株式会社、株式会社日立製作所の5組合員による技術研究組合で、2019年8月に設立されました。
※3 RISC-V(リスク・ファイブ)
米カリフォルニア大学バークレー校で開発されたオープンソースの命令セット・アーキテクチャ。誰でも自由に改良・再配布ができるフリーライセンスとなっています。その適用範囲は広く、エッジコンピューティングからサーバーまでをカバーします。
RISC-V(リスク・ファイブ)はライセンスフリーかつオープンアーキテクチャという強みがあり、エッジ領域のIoT機器に搭載するマイクロプロセッサーに求められる多種多様な要件を満たす柔軟性を備える特徴があります。こうした点が評価され、産業分野ではRISC-Vをベースとしたエッジコンピューティング技術が急速に普及しています。
※4 RISC-Vをベースとしたセキュリティシステム
2020年度にセキュリティシステムの基本機能を開発しました。以下を統合したシステムとなっています。
(1)
トラスト実行環境(TEE:Trusted Execution Environment)
コンピュータがプログラムを実行する際には、メモリーや外部装置などを含めた「実行環境」が必要です。OS、デバイスドライバ、複数のアプリケーションが稼働する通常の実行環境とは分離・隔離された、信頼が必要なプログラムのために別途用意された実行環境をトラスト実行環境と呼びます。
(2)
信頼の起点(Root of Trust)
OS上で稼働するアプリケーションソフトウェアの完全性検証はOSが行い、OSの完全性検証はハードウェアが行います。ハードウェアの完全性検証を行う部分を信頼の起点(ROT)と呼びます。
(3)
産業応用を容易にするための機能を有したTRV
(4)
TRVをサービスに活用するための鍵の管理技術
(5)
上記機能を含めた応用システム
※5 TRV
Trusted RISC-Vの略。トラスト実行環境機能を備えた64bit RISC-V CPU (AppCore)と、Root of Trust機能を備えた32bit RISC-V CPU (SecureUnit)で構成された、TRASIOが開発したデバイスです。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO IoT推進部 担当:大坪、西山 TEL:044-520-5211­

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、橋本、鈴木(美)、根本
TEL:044-520-5151­ E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

関連ページ