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安全安心なドローン基盤技術の取り組み成果が商品化に結実
―災害時やインフラ点検など公共分野での活用に期待―

2021年12月7日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

NEDOは高性能・高セキュリティーな小型ドローンの開発を目指して「安全安心なドローンの基盤技術開発」に取り組み、今般、同事業の成果が(株)ACSLのドローン「SOTEN(蒼天)」の商品化に結びつきました。

同事業の成果を用いて今回商品化される「SOTEN(蒼天)」は、小型・軽量で携帯性に優れるとともに、高い防じん・防水性能を備えることで過酷な環境下での使用も可能にしています。準天頂衛星システム「みちびき」に対応して高精度な位置情報を取得できるほか、データの漏洩や抜き取りの防止、機体の乗っ取りへの耐性を実現する、高セキュリティーな機能も有しています。こうした特徴を生かし、災害時の被災状況調査やインフラの点検など、ドローンのニーズが拡大している公共分野での活用が期待できます。

なお、(株)ACSLは「SOTEN(蒼天)」の詳細を、本日開催する商品発表会で公開します。

小型・高性能で高セキュリティーを実現した小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」の機体と送信機の画像
図 小型・高性能で高セキュリティーを実現した小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」の機体と送信機

1.概要

近年多発する激甚災害を受け、被災状況の調査や被害者の捜索、老朽化したインフラの点検など、政府や地方自治体を中心に公共分野でドローンの活用ニーズが拡大しています。加えて、これらの用途で取得した画像や各種データに関わる、情報セキュリティー上のリスクも増大しています。

そこで、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、2020年4月から2021年11月まで「安全安心なドローン基盤技術開発」※1に取り組み、データの漏洩や抜き取りの防止、機体の乗っ取りへの耐性を実現する高性能な小型ドローンの開発を推進してきました。今般、同事業の成果が株式会社ACSLのドローン「SOTEN(蒼天)」の商品化に結び付きました。なお、商品化の詳細については本日、(株)ACSLが開催する発表会で公開される予定です。

2.今回の成果

本事業では、政府調達に適した小型ドローンのニーズを収集するとともに、ドローンの機体から飛行を地上でコントロールするためのソフトウェア(GCS※2)、各種データの管理を行うクラウドシステムまで、ISO15408※3の評価基準による分析を一貫して実施することで、開発すべき標準機体とセキュリティーの仕様を定めました。試作機の開発中には想定されるユーザーによる操作体験会も2回開催し、ユーザーからのフィードバックを速やかに量産プロトタイプへ反映するなど、短い期間で改善を繰り返す「アジャイル型」の開発を行いました。また、主要部品のさらなる性能向上と、生産や保守・サポートに関わるプロセスも開発しました。

【1】ドローンの標準機体とフライトコントローラーの設計・開発

商品化される機体は小型・軽量(展開時寸法637mm×560mm(プロペラ含む)、重量1.7kg)で、プロペラアームを収納できるほか、カメラのワンタッチ交換や機体上部への取り付けを可能とするなど、優れた携帯性と拡張性を有しています。また高い防じん・防水性能(IP43※4)を備えるとともに、業界標準の機体制御プロトコル「MAVLink※5」に対応し、高い精度で位置情報を取得可能な準天頂衛星「みちびき」に対応したフライトコントローラーを搭載しています。これにより、山間やビルの谷間など過酷な環境下での使用も可能にしました。さらに、ドローンの運航管理に関するリモートID※6は、国土交通省を中心に検討されている、Bluetooth5.0を活用したブロードキャスト型※7を取り入れたほか、クラウドシステムは関係省庁などの組織構成に合わせた権限で、飛行ログや空撮画像・動画の管理ができるようにしました。

これらにより、携帯性と拡張性に優れ、組織での運用にも優れた小型ドローンの標準機体とフライトコントローラーを実現しました。

【2】高いセキュリティーを実現する技術の開発と実装

標準機体とGCS、クラウドシステムにおける物理・ソフト両面でのセキュリティーリスクを洗い出し、ISO15408のセキュリティー評価基準により一貫して分析することで、飛行データや撮影画像の抜き取り防止や通信に関するセキュリティー対策を量産プロトタイプに実装するとともに、運用面で実施すべき対策も抽出しました。これを踏まえ、まず機体の主要部品は災害時の供給リスクなどを考慮し、大部分に国産品を採用したほか、クラウドシステムは国内で運用しているクラウドサービスを採用しました。さらに、機体とGCSは携帯電話通信の閉域網でクラウドシステムと接続可能とすることで、通信時のさらなるセキュリティー強化も実現しました。

これらの成果により、災害時の被災状況の調査やインフラ点検など、公共性のある重要な業務で安全安心にデータを運用できるドローンを開発しました。

【3】より高性能を実現する主要部品の開発支援

リチウムイオン電池を用いた小型・軽量・高出力なモーターやその制御、低騒音で高浮力のプロペラを新たに開発し、十分な飛行時間と通信距離を確保しました。

また撮影画素数20メガピクセルの4Kカメラや赤外線やマルチスペクトルカメラ、ズームカメラを開発するとともに、ドローンへの取り付け交換がワンタッチで可能なカメラ一体型ジンバル※8も開発しました。赤外線やマルチスペクトルの技術を用いたカメラは、被災者の有無の特定や市街地に侵入した害獣の捜索、森林の植生調査や農作物の育成状況の確認など、目視では対応できない高度な業務に適しています。

3.今後の予定

NEDO事業の成果を基に商品化される「SOTEN(蒼天)」が市場に導入されることにより、政府や地方自治体、警察、消防、電力部門といった公共分野で「安全安心なドローン」の利用が推進されることを目指します。NEDOは、ドローンの社会実装に貢献する技術の開発を引き続き推進し、安全・安心にドローンが飛び交う社会の実現に向けた取り組みを進めていきます。

【注釈】

※1 「安全安心なドローン基盤技術開発」
  • ・実施期間:2020年4月~2021年11月
  • ・2021年度予算:5.8億円
  • ・研究開発項目(1):政府調達向けを想定したドローンの標準機体設計・開発及びフライトコントローラー標準基盤設計・開発【委託事業】
    実施者:株式会社ACSL、ヤマハ発動機株式会社、株式会社NTTドコモ
  • ・研究開発項目(2):ドローン主要部品設計・開発支援並びに量産等体制構築支援【助成事業】
    実施者:株式会社ACSL、ヤマハ発動機株式会社、株式会社ザクティ、株式会社先端力学シュミレーション研究所
※2 GCS
Ground Control Stationの略で、地上ステーションとも呼ばれる、ドローンの飛行を地上からコントロールするためのソフトウエアです。
※3 ISO15408
コモンクライテリア(略称 CC)とも呼ばれ、コンピュータセキュリティーのための国際規格です。
※4 IP43
International Protection codeの略で、異物混入防止・防水に関する国際保護等級です。IP43との表記では、異物混入防止レベルが4、防水レベルが3であることを示しています。
※5 MAVLink
Micro Air Vehicle Linkの略で、ドローンと地上ステーション(GCS)間のデータ送信と受信に関わるプロトコルです。
※6 リモートID
飛行中のドローンから登録記号などの識別情報や位置情報などを発信し、関係者が情報を受信できるシステムです。
※7 ブロードキャスト型
ドローンに搭載した送信機からリモートIDを発信する方式としては、送信機から受信機に直接送信するブロードキャスト型と地上の通信インフラ機器を介して通信を行うネットワーク型があります。ブロードキャスト型にはBluetooth5.0やWiFiを使用する方式が、ネットワーク型にはLTEを使用する方式など、それぞれ複数の方式が考えられています。
※8 ジンバル
一つの軸を中心に物体を回転させる回転台のことで、デジタルカメラやスマートフォン、ドローンで動画を撮影するときにカメラの向きを変えたり手ぶれを補正したりする装置のことです。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO ロボット・AI部 担当:田邉、林(修)、山名 TEL:044-520-5241­

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:鈴木(美)、坂本、橋本、根本
TEL:044-520-5151­ E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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