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MEMS技術を用いて薄型・小型の新型電子部品の開発に成功
―金属・樹脂を用いた新たな製造手法で6G世代への進化に貢献―

2022年2月1日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
株式会社旭電化研究所
株式会社アルファー精工
合同会社シナプス

NEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」において、(株)旭電化研究所、(株)アルファー精工、(同)シナプスは、MEMS技術を用いて幅1.2mm・厚さ0.25mmと従来に比べて格段に薄型・小型で、かつ優れた伝送特性を持つ電子部品の開発に成功しました。また、従来のMEMS技術では利用可能な素材がシリコンのみであることから、用途がセンサーなどに限られていましたが、今回開発した手法では金属と樹脂を用いるため、コネクタやソケット、スイッチ、インダクターなど多方面の電子部品への応用展開が可能となります。

本成果をスマートフォンなどに使われる微細で高性能な電子部品へ応用展開し、6G世代への進化と省エネ化に貢献することを目指します。

1.概要

第5世代移動通信システム(5G)の商用サービス開始を受け、国内外ではさらに超低遅延や多数同時接続などの機能が強化されたポスト5Gや6Gに関する技術開発が進んでいます。次世代の通信で用いられる電子機器のコネクタや半導体ソケット※1には、これまで以上の薄型・小型化や優れた高周波伝送特性が求められています。しかし従来製法のインサート成型※2では反りが発生するため、厚さ0.8mm程度以下の薄型・小型製品の成型が困難でした。また接続長が長いため、求められる伝送特性を満たす部品が実現できませんでした。

このような背景の下、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と株式会社アルファー精工、株式会社旭電化研究所、合同会社シナプスは「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」(以下、本プログラム)の一環で、国立大学法人東京工業大学および国立研究開発法人産業技術総合研究所の協力を得て、MEMS※3技術を用いたコネクタやソケットなどの一般電子部品の開発に成功しました。これは、母材となる銅張フィルムの上にMEMS技術で凹凸端子を付加して成形する新たな製造方法によるもので、従来は幅2.0mm・厚さ1.0mmだったコネクタが本成果では幅1.2mm・厚さ0.25mmと、格段に薄型・小型になっています。

今回開発した手法では部品の厚さを0.1mm~0.5mm程度と極めて薄く、サイズも従来比3分の1以下にすることができるため、端子接続部の接続長を短くでき、その結果電気インダクタンスが小さくなり伝送特性が向上します。そのため現在開発が進んでいる6G世代の1GHz~30GHzの高周波伝送帯域において、挿入損失が-3dB程度、特性インピーダンスのミスマッチが5Ω以下という伝送特性を満たすとともに、大幅な省エネ化を達成する電子部品の製造が可能となりました。また、従来のMEMS技術では利用可能な素材がシリコンのみであることから、用途がセンサーなどに限られていましたが、今回開発した手法では金属と樹脂を用いるため、コネクタやソケット、スイッチ、インダクター、ヒートシンク、半導体パッケージ、極細FPC、マイクロモーター部品など多方面の電子部品への応用展開が可能となります。

2.今回の成果

【1】MEMSコネクタの開発

スマートフォンやノートPC、ゲーム機などに必ず使用される2列型のコネクタをターゲットとし、従来比4分の1の厚さのMEMSコネクタの開発に成功しました。伝送特性は従来品に比べ損失が4分の1程度と少なくなっています。本開発コネクタは、従来品に比べ重量で6分の1以下となり、金属や樹脂の使用量が格段と少なくなって、素材の面から省エネ・省資源な製品となっています。

またスマホなどに使用された場合常時コネクタ部でジュール熱が発生しますが、本開発品は接触抵抗が既存品に比べ4分の1以下と小さいため、従来比で55%の消費エネルギー削減に貢献することができます。

  • 開発したMEMSコネクタ図
    図1 開発したMEMSコネクタ

【2】半導体ソケットの開発

スマートフォンやPCに搭載される近年のロジック系半導体パッケージは、図2のように、実装面に多数の半田ボールを有するものがほとんどです。半導体の微細化が進むにつれて、ボールの数は年々増加しボールピッチも小さくなるため、これらを試験する半導体ソケットの製造が、困難で高価となっています。

本開発では1500ピン~2500ピン、ピンピッチ0.3mm~0.5mmのロジック系BGA※4タイプの半導体パッケージの試験と実装をターゲットにした薄型半導体ソケットの開発に成功しました。今回開発したソケットでは、ボールピッチを0.3mmにまで小さくしたものに対応することができました。従来はコイルバネを内蔵した接続長の長いプローブピンを格子状に配列した高価なソケットでのみ試験が可能でしたが、本開発ではMEMS法により一括でコンタクトデバイスを作製することによって、圧倒的な低コスト化を達成し、かつ高周波対応可能で省エネルギーに貢献するソケットを実現しました。

  • ロジック系半導体パッケージ図
    図2 ロジック系半導体パッケージ
  • 開発した半導体ソケット図
    図3 開発した半導体ソケット

3.今後の予定

本プログラムでの研究開発終了後においても、引き続き、(株)アルファー精工、(株)旭電化研究所、(同)シナプスの3社は、量産製造や低コスト加工技術、歩留まり改善、さらなる高精度加工技術の開発などに取り組みます。これらの技術をスマートフォンなどに使われる微細で高性能な電子部品へ応用展開し、6G世代の通信システムへの進化と省エネ化に貢献することを目指します。

NEDOは、今後も経済成長と両立する持続可能な省エネルギーの実現を目指し、「省エネルギー技術戦略」で掲げるエネルギー・産業・民生(家庭・業務)・運輸部門などにおける重要技術を中心に、2030年には高い省エネ効果が見込まれる技術について、事業化までシームレスに技術開発を支援します。

【注釈】

※1 半導体ソケット
メモリやロジック系半導体を試験したり、実装したりするための接続用部品で、ロジック系半導体では数千ピンの半田ボールを有する半導体パッケージを試験するため、高価な試験ソケットが必要となっています。
※2 インサート成型
金型内に挿入した金属部品の周りに樹脂を注入して金属と樹脂を一体化する成形方法で、小型で高精度なコネクタなどの電子部品の製法に利用されている金型プレス法です。
※3 MEMS
MEMS(メムス)とは「Micro Electro Mechanical Systems」の略称で、主に半導体のシリコン基板などに、機械要素部品のセンサー・アクチュエーター・電子回路などをひとまとめにしたミクロンレベル構造を持つデバイスを指します。
※4 BGA
BGA(Ball Grid Array)は半田ボールがパッケージの下面に格子状に配列されたパッケージで、スマートフォンやノートPCに搭載されるロジック系半導体は、ほとんどがこのBGAタイプのパッケージが用いられています。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 省エネルギー部 担当:赤城 TEL:044-520-5281
(株)旭電化研究所 担当:溝口 TEL:042-520-1772
(株)アルファー精工 営業技術部 担当:工藤 TEL:042-650-7715
(同)シナプス 担当:前田 TEL:090-6023-1179

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:橋本、坂本、鈴木、根本
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

  • 新聞、TVなどで弊機構の名称をご紹介いただく際は、“NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)”または“NEDO”のご使用をお願いいたします。

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