本文へジャンプ

グリーンイノベーション基金事業で、圧力が低く、CO2濃度の低い排気ガスからCO2を分離回収する技術開発に着手
―CO2分離回収コストの低減による関連産業の競争力強化を目指す―

2022年5月13日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

NEDOはグリーンイノベーション基金事業の一環で、「CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」(予算総額382億円)に着手します。本プロジェクトでは、高圧でCO2濃度が高い排気ガスに比べ、CO2分離回収に多くのエネルギーを要するとされる、低圧・低濃度の排気ガス(CO2濃度10%以下)を対象として、2030年に2000円台/t-CO2以下のCO2分離回収コストを実現するための技術開発に取り組みます。

これにより、CO2分離回収関連の設備産業や素材産業の拡大、また、将来的には、カーボンリサイクル産業に対し、コスト競争力のある分離回収されたCO2の提供が期待されます。

1.グリーンイノベーション基金事業について

日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする目標を掲げました。この目標は従来の政府方針を大幅に前倒しするものであり、実現するにはエネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションなど現行の取り組みを大きく加速させる必要があります。このため、経済産業省はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に総額2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などを研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援するグリーンイノベーション基金事業を立ち上げました。

なお、NEDOは本基金事業の取り組みや関連技術の動向などをわかりやすく伝えていくことを目指し、「グリーンイノベーション基金事業 特設サイト※1」を公開しています。

2.本プロジェクトの背景

本プロジェクトはグリーン成長戦略※2で実行計画を策定した重点分野を支援対象としており、その一つとして「カーボンリサイクル・マテリアル産業」が挙げられています。

二酸化炭素(CO2)分離回収の低コスト化・低エネルギー化には、CO2回収効率を飛躍的に向上させる素材などの開発、カーボンリサイクル/CCUSまでを包含した全体システムの開発が必要となりますが、利用形態に応じて排ガス特性[圧力や濃度、含まれる夾雑物(きょうざつぶつ)の種類と量など]はさまざまであることから、一定の分類の下に、最適な素材・プロセスなどを開発することが求められます。

これまで、EOR(原油促進回収法)に用いられるCO2分離回収技術の商用プラントが国外で稼働している他、国内でも、石炭火力発電や製鉄プロセスなどにおけるCO2分離回収技術の開発・実証が進められています。今後は、より低圧・低濃度の排ガスへの対応に進展していくことが見込まれます。

そこで、NEDOは経済産業省が策定した研究開発・社会実装計画※3に基づき、ガス火力発電、工業炉といった産業プロセスなど、CO2濃度が10%以下の領域を対象とした「CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」の公募※4を行い、7テーマを採択しました。

3.事業内容

本プロジェクトでは、世界に先駆けて、CO2濃度10%以下の低圧・低濃度のCO2に対して、2030年に2000円台/t-CO2以下のCO2分離回収コストを実現するための技術開発に取り組みます。これにより、CO2分離回収関連の設備産業や素材産業の拡大、また、将来的には、カーボンリサイクル産業に対し、コスト競争力のある分離回収されたCO2の提供が期待されます。

名:
グリーンイノベーション基金事業/CO2の分離回収等技術開発プロジェクト
間:
2022年度~2030年度(予定)
算:
382億円
実施テーマ:
【研究開発項目】低圧・低濃度CO2分離回収の低コスト化技術開発・実証

(研究開発内容)

  • [1]天然ガス火力発電排ガスからの大規模CO2分離回収技術開発・実証
    天然ガス火力発電におけるCO2分離回収に要する消費エネルギーとコスト低減を図るため、大規模化を見据えつつ、分離素材の性能向上や分離回収設備のモジュール化、補機を含むシステム全体のエネルギー効率最大化プロセス設計などの課題を解決する技術開発を行います。
  • [2]工場排ガス等からの中小規模CO2分離回収技術開発・実証
    工場などからの排ガスは排出源が分散し、その性質も多様です。火力発電所に比べて規模は小さいものの、現場ニーズに即した異なる要素技術が求められます。本テーマでは、排ガス特性に応じた分離回収技術の開発とともに、設置場所の制約を考慮したコンパクトな設備設計により社会実装促進につながる技術開発を進めます。
  • [3]CO2分離素材の標準評価共通基盤の確立
    低濃度CO2分離回収技術の低コスト化を目指す上で鍵となる分離素材の性能向上、開発促進を図るため、実ガスを用いた分離素材の統一的な性能評価技術の共通基盤を確立します。

【注釈】

※1 グリーンイノベーション基金事業 特設サイト
別ウィンドウが開きます グリーンイノベーション基金事業 特設サイト
※2 グリーン成長戦略
日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を、経済と環境の好循環につなげるための産業政策として、2021年6月18日に経済産業省が関係省庁と連携して「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。
※3 研究開発・社会実装計画
グリーンイノベーション基金の適切かつ効率的な執行に向けて、経済産業省においてグリーンイノベーション基金で実施する「CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」の内容を「研究開発・社会実装計画」として策定しました。
別ウィンドウが開きます「CO2の分離回収等技術開発」プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画を策定しました
※4 「CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」の公募
実施者募集(公募):サイト内リンク グリーンイノベーション基金事業/CO2の分離回収等技術開発プロジェクト(本公募)

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 環境部 担当:髙橋(意)、神田、布川、鈴木(恭)

TEL:044-520-5293 E-mail:cct.projects@ml.nedo.go.jp

(グリーンイノベーション基金事業全体についての問い合わせ先)

NEDO グリーンイノベーション基金事業統括室 担当:井上、堀、茂手木

E-mail:green-innovation@nedo.go.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:橋本、坂本、鈴木、根本

TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

  • 新聞、TVなどで弊機構の名称をご紹介いただく際は、“NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)”または“NEDO”のご使用をお願いいたします。

関連ページ