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再エネの主力電源化に向け、次々世代の電力ネットワーク安定化技術の開発に着手
―2030年の再エネ比率36%~38%程度の実現に貢献―

2022年6月20日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

NEDOは「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた次々世代電力ネットワーク安定化技術開発(STREAMプロジェクト)」事業を立ち上げ、新たに二つの研究開発テーマに着手しました。

本事業では前身事業の成果を踏まえ、慣性力や、新たな課題である短絡容量の低下への対策に関する技術開発を行うとともに、小規模な電力系統でこれらの効果を検証します。

本事業を通じて、再エネの主力電源化に向け、制約となる電力系統のさらなる課題を克服し、「電力インフラのレジリエンス(強じん性)向上」や「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスの創出」を目指します。さらに「第6次エネルギー基本計画」で掲げられた2030年の再エネ比率36%~38%程度の実現に貢献します。

1.概要

日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では、2030年再エネ比率36%~38%程度の目標が示されるなど、再エネ導入拡大の重要性は高まる一方です。「第6次エネルギー基本計画」では「第5次エネルギー基本計画」に引き続き「再生可能エネルギーの主力電源化」に向けた「系統制約の克服」が示されており、研究開発による実現が大いに期待されています。

このような背景の下、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、2019年から前身事業となる「再生可能エネルギーの大量導入に向けた次世代電力ネットワーク安定化技術開発※1」で、持続的な再エネの導入を可能とするため、次世代の系統安定化に必要な基盤技術の開発に取り組んでいます。

このたび上記事業の成果を継承する「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた次々世代電力ネットワーク安定化技術開発(STREAM※2プロジェクト)」事業を立ち上げ、新たに二つの研究開発テーマに着手しました。

具体的には、最新技術や政策動向を把握し、将来の電力系統の技術的、制度的な課題までを見据えた上で、慣性力※3や新たな課題である短絡容量※4の低下への対策に関する技術開発を行います。また、小規模な電力系統を用いてこれらの効果を検証します。

NEDOは本事業を通じて、再エネの主力電源化に向け制約となる電力系統のさらなる課題を克服し、「電力インフラのレジリエンス(強じん性)向上」や「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス※5の創出」を目指します。さらに再エネの主力電源化に向け、2030年の再エネ比率36%~38%程度の実現に貢献します。

2.事業内容

(1)事業名

再生可能エネルギーの主力電源化に向けた次々世代電力ネットワーク安定化技術開発(STREAMプロジェクト)

(2)事業期間

2022年度~2026年度

(3)2022年度事業規模

1540百万円(予定)

(4)実施テーマ

【研究開発項目1】疑似慣性PCS※6の実用化開発

(研究開発内容)

配電系統が主なターゲットとなる電流制御方式(GFL)および電圧制御方式(GFM)の疑似慣性PCSについて、慣性機能と単独運転検出機能が両立する機器を開発します。また、電力変換装置(PCS:パワーコンディショナー)から生じる事故電流は回転系発電機よりも小さく、事故を適切に検出できないおそれがあることから、事故電流の供給機能などの解決策について検討し、必要な機能を開発します。また、開発した疑似慣性PCSが複数台導入された際にも、安定的に動作することを小規模な系統において検証し、系統連系規程などへの反映に必要となるデータを取得します。

【研究開発項目2】M-Gセット※7の実用化開発

(研究開発内容)

再エネおよび蓄電池を接続したM-Gセットを開発し、系統事故時などでも従来の回転系の発電機と同様な挙動を示し、電力系統の安定化に貢献することを検証します。具体的には、再エネの出力が急激に減少する場合や、蓄電池の充放電を高速に実施する場合、M-Gセットの電動機M側の系統における過電圧、過電流などにより再エネおよび蓄電池が運転停止しないことを検証します。

さらに蓄電池などを有効活用することで、基幹系統での地絡事故※8発生時の蓄電池による電力を急減させる制御など、既存の同期発電機にはない系統安定化制御についても検証します。

事業テーマの詳細と実施予定先は、以下の実施予定先一覧をご覧ください。

PDF(別紙)実施予定先一覧(55KB)

【注釈】

※1 再生可能エネルギーの大量導入に向けた次世代電力ネットワーク安定化技術開発
※2 STREAM
Future-generation power network Stabilization Technology development for utilization of Renewable Energy As the Major power source の略です。
※3 慣性力
電気的な瞬時の変化に耐える力のことです。火力発電機などの発電機(同期発電機)は、電気を発生させるために回転子を回転させて発電します。こうした発電機は、自らの回転子を一定回転に維持しようとする「慣性」を持ち、電気的な瞬時の変化に耐えることができます。しかし、太陽光発電などインバーターを介して電力を供給する電源は、回転子が無く、慣性を持ちません。そのため、再エネが増加し、相対的に火力発電機などの慣性力を持つ発電機が減少すると、これまで安定供給が維持できていた電力系統でも、系統事故のような瞬時の変化が発生した場合に広域的な停電に陥るリスクが高まります。
※4 短絡容量
電力系統で故障や事故などが発生した際に、電位差のある電源・電線から瞬時に流れ込む電流(短絡電流)の大きさの程度を示すものです。ここでは、当該地点の電圧維持能力を表す指標の意味で用いています。この大きさや分布は、系統構成や故障・事故の位置などによって複雑に変化します。
※5 エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス
バーチャルパワープラント(VPP)やデマンドレスポンス(DR)を用いて、一般送配電事業者、小売電気事業者、需要家、再生可能エネルギー発電事業者といった取引先に対し、調整力、インバランス回避、電力料金削減、出力制御回避などの各種サービスを提供する事業のことをいいます。
※6 疑似慣性PCS
同期発電機の挙動を模擬し、疑似的な慣性を提供する機能をもったPCSのことです。系統安定化機能として、慣性低下の緩和に寄与することが期待されています。
※7 M-Gセット
電動機(M:Motor)と発電機(G:Generator)を組み合わせ、再エネの活用とともに系統安定化に同期発電機の特性を活用することができる装置です。
  • 図 M-Gセットの導入イメージ(例)の画像
    図 M-Gセットの導入イメージ(例)
※8 地絡事故
電力系統において、予定外に電気回路と大地が接続され、電位差のある電源・電線から電流が大地へ瞬時に流れ込むこと(地絡)による事故のことです。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO スマートコミュニティ・エネルギーシステム部 担当:西林、前野、横山、吉田、門吉、本山
TEL:044-520-5269

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、橋本、鈴木、根本
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。

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