カーボンリサイクル技術の確立に向けた実証研究拠点が完成
―日本初、隣接発電所のCO2を有効利用した実証研究拠点で、 技術の早期実用化を目指す―
2022年9月14日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
NEDOはCO2を資源として有効利用するカーボンリサイクル技術の確立に向け、広島県大崎上島町に、カーボンリサイクル実証研究拠点を整備し、今般、完成しました。本研究拠点は、実証研究エリア、基礎研究エリア、藻類研究エリアの三つ(総敷地面積14300m2)からなり、隣接する中国電力株式会社大崎発電所で実証研究中の次世代火力発電設備から分離・回収したCO2を、研究用に直接供給できる日本初の施設となります。NEDOは、本実証研究拠点の整備を通じて、さまざまなカーボンリサイクル技術の開発を効率的かつ集中的に進め、技術の早期実用化を目指します。
なお、本実証研究拠点の完成に伴い、将来の幅広い情報発信と成果普及に向けて、本日、施設を関係者に公開するイベントを開催しました。
(左:基礎研究エリアの研究棟、右:拠点内のCO2供給設備)
1.概要
二酸化炭素(CO2)を資源として有効活用するカーボンリサイクル技術は、カーボンニュートラルを実現するためのキーテクノロジーであり、経済産業省が2021年7月に改訂した「カーボンリサイクル技術ロードマップ※1」において、技術開発をさらに加速する必要性が指摘されています。
これを踏まえ、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、大崎クールジェン株式会社とCO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)※2やCO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)※3など次世代火力発電の実証研究を中国電力株式会社大崎発電所内(広島県大崎上島町)で行ってきました。さらに、2020年からは、カーボンリサイクル技術の実証研究拠点を整備してきました。本研究拠点では、IGCCやIGFCの実証研究で分離・回収したCO2をパイプラインで研究用に供給し、カーボンリサイクル技術の開発に利用できるため、将来的に発電所から排出されるCO2で実際にカーボンリサイクルを行う場合と同じ条件のガスを使用した研究開発や実証が可能になります。
今般、実証研究拠点の三つのエリア(実証研究エリア、基礎研究エリア、藻類研究エリア)すべてが完成したことに伴い本日、施設を関係者に公開する開所記念イベントを開催しました。
2.実証研究拠点の概要
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図2 カーボンリサイクル実証拠点の俯瞰(ふかん)図と大崎発電所内の位置
本実証研究拠点は実証研究エリア、基礎研究エリア、藻類研究エリアの三つのエリア(総面積14300m2)からなり、発電所で分離回収したCO2を研究用に供給できる日本初の施設です。実証研究エリア、基礎研究エリアを「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発※4」で、藻類研究エリアを「バイオジェット燃料生産技術開発事業※5」で、整備・運営しています。
2020年度に着工後、先行して実証研究エリアと藻類研究エリアを整備※6し、2022年4月までに順次運用を開始していましたが、今般、基礎研究エリアの工事※7も完了しました。これにより全エリアの施設が完成し、現在、研究開発を担う事業者が各エリアに順次入居して、研究活動を開始しています。詳細は下記をご参照ください。
【1】実証研究エリア
屋外の敷地にCO2などを供給するインフラが整備されており、事業者がそれぞれ必要な設備を設置して、カーボンリサイクル技術の経済性やCO2削減効果などを評価するための実証研究を行います。
【2】基礎研究エリア
六つの研究室からなる基礎研究棟と、分析室や会議室を備えた共用棟で構成され、将来のカーボンリサイクル技術の要素技術の確立に向けた基礎研究・先導研究を行います。
【3】藻類研究エリア
微細藻類の培養・分析に必要な設備を持った研究棟で、微細藻類を原料とするバイオジェット燃料の製造技術確立を支援する測定・分析手法や条件設定などの標準化に取り組みます。
3.今後の予定
NEDOは本拠点においてさまざまなカーボンリサイクル技術の開発を効率的かつ集中的に進めるとともに、本拠点を「ショーケース」として世界中にアピールし、海外の研究者などとの情報交換や連携を促進します。これらを通じて、IGCCやIGFCなどの次世代火力発電技術と並んでカーボンリサイクル技術の実用化を促進し、カーボンニュートラルの実現に貢献することを目指します。
【注釈】
- ※1 カーボンリサイクル技術ロードマップ
- (参考)経済産業省リリース(2021年7月26日)「 『カーボンリサイクル技術ロードマップ』を改訂しました」
- ※2 CO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)
- IGCCはIntegrated Coal Gasification Combined Cycleの略です。石炭をガス化して、ガスタービンと蒸気タービンの2種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行う発電方式のことです。
- (参考)NEDOリリース(2019年12月26日)「 CO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電の実証試験を開始」
- ※3 CO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)
- IGFCはIntegrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycleの略です。石炭をガス化して、燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンの3種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行う発電方式のことです。
- (参考)NEDOリリース(2019年4月17日)「 世界初、石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証事業に着手」
- ※4 カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発
- 概要: カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発
- ※5 バイオジェット燃料生産技術開発事業
- 概要: バイオジェット燃料生産技術開発事業
- ※6 先行して実証研究エリアと藻類研究エリアを整備
- (参考)NEDOリリース(2020年8月5日)「 カーボンリサイクル技術における実証研究拠点化と技術開発に着手」
- (参考)NEDOリリース(2020年10月5日)「 バイオジェット燃料の普及を推進する研究開発6件を始動」
- ※7 2022年5月末に基礎研究エリアの工事
- (参考)NEDOリリース(2022年4月7日)「 カーボンリサイクル実証研究拠点、基礎研究エリアで研究開発に着手」
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 環境部 担当:吉田、皆川、戸島 TEL:044-520-5293
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:根本、橋本、坂本、鈴木
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp
- E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。
- 新聞、TVなどで弊機構の名称をご紹介いただく際は、“NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)”または“NEDO”のご使用をお願いいたします。
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