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油脂酵母からのパーム油代替油脂で世界トップレベルの生産量(98g/L)を実現
―低環境負荷な油脂の安定供給により、脱炭素社会実現に貢献―

2022年10月4日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
不二製油グループ本社株式会社
学校法人新潟科学技術学園 新潟薬科大学

NEDOの「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」プロジェクトで、不二製油グループ本社(株)と新潟薬科大学は共同で、脱炭素社会実現に向けたサステナブルな油脂の開発を進めています。このたび、本プロジェクトにおいて、産業用スマートセルの発酵培養により得られた油脂酵母からパーム油の代替油脂を培養液1L当たり98gという世界トップレベルの生産量を6日間で実現しました。供給不足が懸念される油糧作物の代替生産技術として、低環境負荷な油脂の安定供給システムが実現することにより、持続可能な脱炭素社会の実現への貢献が期待できます。

なお本研究成果は、10月12日(水)から14日(金)までパシフィコ横浜で開催されるバイオテクノロジー展「BioJapan2022」のNEDOブースで展示します。

1.背景

植物や微生物などの生物を用いて物質を生産する技術(バイオものづくり)は、従来の化学プロセスに比べ、省エネルギーであるとともに、原料を化石資源に依存しないバイオマスから生産できるため、炭素循環型社会の実現や持続的経済成長に導くものづくりへの変革を期待できます。一方で、菌株の選抜・育種、培養条件の最適化、生産のスケールアップ検討など、各開発段階の連携ができていないため、バイオ製品の社会実装が停滞気味となっていることが問題になっています。

このような背景からNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、2020年度から「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発(バイオものづくりプロジェクト)※1」を実施しています。その一環で、企業主体で実際の産業用宿主(しゅくしゅ)※2をベースとして、遺伝子工学技術や情報科学技術を用いることで、これまで生産困難であった化合物などの生産を実現化する宿主を開発するテーマ「脂溶性化合物生産のための油脂酵母産業用スマートセル※3構築」を推進しています。

本テーマにおいて、不二製油グループ本社株式会社(不二製油グループ本社)、学校法人新潟科学技術学園 新潟薬科大学(新潟薬科大学)は、持続可能な脱炭素社会実現に向け供給不足が懸念される油糧作物の代替生産技術として油脂高蓄積酵母による油脂生産の研究を行っています。より多くの油脂を生産できる油脂酵母を開発し、産業用スマートセルによる2030年ごろまでの実用化につなげるため、各参画機関と連携し、油脂の生合成経路設計の最適化、工学的手法による油脂高生産プロセス開発を進めています(図)。この酵母による低環境負荷の油脂生産システムの実現は、食品や非食品用途の油脂の安定供給に大きく貢献できる技術になると期待できます。バイオものづくりは岸田首相が掲げる政策「新しい資本主義」の重点投資先にも位置づけられており、今回の成果はその好事例になります。

  • 図 研究開発の概要説明の画像
    図 研究開発の概要

2.今回の成果

油脂酵母によるパーム油代替油脂を生産するための実用化課題としては、(1)油脂品質の向上、(2)油脂生産性の向上(油脂生産速度、対糖油脂収率※4)、(3)細胞増殖性の向上(比増殖速度、細胞密度)、(4)培養から菌体回収・油脂精製プロセスの実用的な製造工程などが挙げられます。本テーマでは、これら課題の解決を進める中で、より高付加価値な油脂組成のオレイン酸を高効率で発酵生産可能なスマートセル株を用いて、油脂酵母からパーム油の代替油脂の培養を5L発酵槽で実施しました。その結果、6日間で培養液1L当たり98gの油脂の生産に成功しました(油脂生産性98g-Lipid/L/6days)。

また対糖油脂収率では20%と良好な成果が得られ、本テーマの中間目標(2022年度)「脂溶性化合物の生産性70g-Lipid/L/6days(油脂変換率:20%)」を達成しました。この成果は油脂生産量としては世界トップレベルの水準で、パーム油代替油脂の実用化に向けた2026年度の最終目標100g-Lipid/L/4days、対糖油脂収率25%の達成に大きく近づきました。さらに、この油脂生産に使用する産業用スマートセルは、油脂合成が効率よく進むように代謝経路が改善された産業用油脂高蓄積酵母として継続して開発・改良中です。

なお本成果は10月12日(水)から14日(金)までパシフィコ横浜で開催されるバイオテクノロジー展「BioJapan2022」のNEDOブース※5で展示します。加えて、イベント初日にANNEXホールで開催するNEDOセミナーの講演中に本テーマを紹介します。

3.今後の予定

NEDO、不二製油グループ本社、新潟薬科大学は、引き続き産業用スマートセルを開発し、酵母による高効率な油脂生産技術の確立を目標に開発を進めていきます。今後、油脂生産速度や対糖油脂収率を向上させ、最終的には2050年ごろ、世界最高水準の油脂生産性を持つ産業用スマートセルによるカーボンリサイクル型の国内油脂供給システムの実現を目指します。

【注釈】

※1 カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発(バイオものづくりプロジェクト)
事業名:カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
研究開発テーマ名:データ駆動型統合バイオ生産マネジメントシステム(Data-driven iBMS)の研究開発
テーマ:脂溶性化合物生産のための油脂酵母産業用スマートセル構築
事業期間:2020年度~2026年度(予定)
事業ページ:サイト内リンクカーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
※2 宿主
本テーマにおいて、宿主とは物質生産に必要な外来遺伝子を導入する微生物細胞を指します。外来遺伝子を導入することで物質生産能力を高められた微生物細胞が、※3にあるスマートセルと呼ばれます。
※3 産業用スマートセル
スマートセルとは生物細胞が持つ物質生産能力を人工的に引き出し最適化された細胞のことをいいます。さらに、実験室レベルで最適化されたものから工業的な産業生産に適したレベルに最適化したものを産業用スマートセルといいます。
※4 対糖油脂収率
酵母の栄養源として使用する糖の量に対して生産される油脂の量の割合です。
※5 NEDOブース
BioJapan 2022へのNEDO出展概要
事業ページ:サイト内リンクBioJapan 2022 への出展

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 材料・ナノテクノロジー部 担当:田村、峯岸、秋葉、林(智)

TEL:044-520-5220  E-mail:bioproduction[*]ml.nedo.go.jp

不二製油グループ本社(株) 広報 担当:岡本

TEL:06-6459-0701 E-mail:kouhou[*]so.fujioil.co.jp

新潟薬科大学 入学広報センター 担当:生野、小林

TEL:0120-2189-50  E-mail:koho[*]nupals.ac.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:鈴木、坂本、根本、橋本

TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

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