千葉県茂原市にNEDOバイオファウンドリ拠点が完成、本格始動
―前処理から精製まで製品実用化へ橋渡し―
2023年6月2日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
NEDOの「バイオものづくりプロジェクト」で、Green Earth Institute(株)(以下、GEI)が2021年度から建設を進めていたバイオ生産実証を推進する拠点「バイオファウンドリ研究所」が、千葉県茂原市に完成しました。本プロジェクトでは、同拠点を活用したバイオ生産実証を行う企業・大学・研究機関などを募集し、ラボスケールなどで開発したスマートセルを最大3000Lの発酵槽までスケールアップして検証できる場を提供し、前処理から精製までの製品実用化の橋渡しを目指します。
また、2023年度からは発酵生産プロセスにおける最適化・スケールアップおよび数値流体解析(CFD)などの解説、NEDOバイオファウンドリ拠点設備を用いた発酵生産プロセスの運転実習を含む教育講座も計画しており、バイオとデジタルの融合を基盤とする環境保全および技術・人材の整備に貢献します。
なお、これに伴い、2023年6月2日に同拠点の落成式を行いました。
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図2 完成した建屋内の容量3000Lの発酵槽
1.背景
近年、産業界では大気中の二酸化炭素(CO2)の削減、炭素循環型社会の実現といった社会課題の解決と、持続的経済成長の両方が求められています。こうした中、従来の化学プロセスに比べ省エネルギー・低コストで、植物や微生物などのバイオマス資源から生物を用いて物質を生産できる技術(バイオものづくり)に注目が集まっています。
日本では「バイオ戦略2020※1」に従い、2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現するための種々の取り組みが進められています。バイオものづくりでは、原料から最終製品に至る過程に存在するバイオマス資源の原料化や、スケールアップの技術的・コスト的な難しさなどから、実用化に至らないケースが数多くあります。また、バイオ生産技術は現場担当者の経験に基づいた「匠(たくみ)の技」とも言われ、製造拠点の海外移転や熟練担当者の高齢化に伴い、自動化や技術の継承も課題となっています。
こうした背景のもと、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)とGEIは、「バイオものづくりプロジェクト※2」における取り組みのひとつとして、バイオファウンドリ※3に関する拠点の形成と、その設備を利用したバイオものづくり人材の育成※4事業を行っています。
2.完成したNEDOバイオファウンドリ拠点
主にスタートアップ企業や大学・公的研究機関の研究者などが開発したスマートセル※5のうち、有用な株による物質生産プロセスをスケールアップして実用化の可能性を検証するための技術・設備の提供、産業用物質生産システムの一貫的な検証が可能な設備、バイオものづくり人材の育成など、バイオ由来製品の社会実装を推進するための場として利用することを目的とし、NEDOバイオファウンドリ拠点の整備を進めています。
GEIは、2021年度にNEDOバイオファウンドリ拠点の実施者として計画が採択され、2022年度には最大1500Lの発酵槽を含む設備の一部稼働を開始※6しました。また、既に同拠点で座学による講座(5講座/161人参加)※7も実施しています。
今般、GEIは同拠点内に最大3000Lまでのスケールでの培養・分離・分析が可能な設備がある「バイオファウンドリ研究所」を千葉県茂原市(三井化学株式会社茂原分工場内)に完工しました(表1参照)。
なお、これに伴い、2023年6月2日に落成式を行いました。
3.今後の予定
バイオファウンドリ事業終了の2026年度まで順次設備を拡充していく計画です。2023年度は精製設備の導入を予定しています。また、同拠点を活用してバイオ生産実証を行う企業や大学・研究機関を募集※8する計画です。ラボスケールで開発した有用なスマートセルを最大3000Lの発酵槽でスケールアップ培養して検証できる場を提供し、前処理から精製までの製品実用化の橋渡しを目指します。
また、2022年度に実施した座学による講座に加えて、2023年度からは発酵生産プロセスにおける最適化・スケールアップ手法およびCFD※9手法の解説、同拠点の設備を用いた、発酵生産プロセスの運転などの実習も計画しており、培養プロセスや、バイオとデジタルの融合技術に関わる人材育成にも貢献します。
建屋 | 使用目的 | 稼働時期 | |
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Green Earth研究所 サテライト研究施設 【千葉県木更津市】 |
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2022年5月稼働開始
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バイオファウンドリ研究所 【千葉県茂原市】 | 既存の実証設備 |
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2022年5月より稼働中 |
前処理糖化室 |
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今般完工した建屋
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技術開発室 |
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培養室 |
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試製室 |
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精製室 |
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分析室 |
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ユーティリティー設備 |
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【注釈】
- ※1 バイオ戦略2020
- 総合イノベーション推進会議によって2020年6月に決定された日本のイノベーション戦略の一つで、「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現すること」を目標に、持続可能性、循環型社会、健康(ウェルネス)をキーワードに産業界、大学、自治体などの参画も得て推進されています。
- バイオ戦略2020(基盤的施策)のポイント(説明資料)
- バイオ戦略2020(基盤的施策)(本文)
- ※2 バイオものづくりプロジェクト
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- 事業名:カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
- 事業期間:2020年度~2026年度(予定)
- 事業概要:カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
- ※3 バイオファウンドリ
- バイオ由来製品の生産性向上やコスト低減化を図ることを目的とした培養検討・受託製造などを可能とするバイオ生産システム(設備・組織)を指します。
- ※4 バイオものづくり人材の育成
- (参考)NEDOリリース(2022年7月1日)「バイオものづくり分野の人材育成プログラムを順次開講」
- ※5 スマートセル
- 高度にデザインされ、これまで利用し得なかった生物機能が引き出された細胞のことで、目的とする物質の製造機能を合理的に高めた細胞のことをいいます。
- ※6 一部稼働を開始
- (参考)NEDOリリース(2022年5月24日)「千葉県で微生物発酵生産用の実証拠点を稼働開始」
- ※7 同拠点で座学による講座(5講座/161人参加)
- (参考)NEDOリリース(2022年7月1日)「バイオものづくり分野の人材育成プログラムを順次開講」
- ※8 同拠点を活用してバイオ生産実証を行う企業や大学・研究機関を募集
- 利用目的、原料、使用菌体、検証スケールなどの情報とバイオファウンドリ運用計画に基づき、本拠点設備の利用事業者・機関を選出します。
- ※9 CFD
- Computational Fluid Dynamicsの略。流体の運動に関する方程式をコンピューターで解くことによってさまざまな流れを推定する数値解析・シミュレーション手法です。発酵槽内の状況をシミュレーションできます。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 材料・ナノテクノロジー部 バイオエコノミー推進室 担当:小笠原、長谷川、林(智)
TEL:044-520-5220 E-mail:bioproduction[*]ml.nedo.go.jp
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:根本、坂本、橋本、黒川
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp
E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。
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