本文へジャンプ

バス・タクシー・トラックの運輸事業者から電動商用車の運行データ受け入れを開始
―電動商用車のエネルギーや運行効率の最適化を実現するDXの構築を目指す―

2023年8月31日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

NEDOは、グリーンイノベーション基金事業で自家用車に比べ稼働率が高く二酸化炭素(CO2)排出量が多い商用車のカーボンニュートラルに向け、電動商用車の導入と同時に商用利用時のエネルギーおよび運行効率を最適化するデジタルトランスフォーメーション(DX)の構築を目指して「スマートモビリティ社会の構築」(以下、本プロジェクト)に取り組んでいます。その一環で本日、産業技術総合研究所は、バス・タクシー・トラックの運輸事業者から、当該DXの構築に必要な電動商用車の運行情報・電池などの車両データや充電・水素充填(じゅうてん)利用情報などのデータの受け入れを開始しました。

今後、本プロジェクトで産総研は、より一層大量データの受け入れを進めつつ、受け入れたデータをもとに、より高精度な運行管理と一体的なエネルギーマネジメントシステムを構築します。

なお、個別最適を軸にした各種システム構築の取り組みは各国で進んでいますが、本プロジェクトによる社会全体の最適化に向けた実証が進めば、世界に先駆けた取り組みとなり得ます。

1.背景

日本国内全体のCO2排出量のうち、運輸部門による排出は約17%を占め、そのうち約40%が貨物などの商用車によるものです。CO2低減のためには、商用車の電動化が必要となりますが、商用車の電動化が拡大すると、充電用電力需要の増加や充電タイミングの重複を解消するために電力系統の増強が必要になるなど社会コストの増大が課題となります。また、車両を保有する運輸事業者にとっては、充電に伴う運行効率の低下や契約電力の見直し、関連設備の導入・保守といった事業コスト増大が懸念されます。

これらの課題を解決するには、電力会社、運輸事業者、自動車会社、アプリケーション提供企業、エンドユーザーなど多様なステークホルダーが複雑に関係しているため、リアルタイムデータを介して全体最適を図るDXの活用が重要となります。

このような背景の下、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は商用車のカーボンニュートラルに向け、電動商用車の導入と同時に商用利用時のエネルギーおよび運行効率を最適化するため、グリーンイノベーション基金事業※1の一環の本プロジェクト※2で昨年7月に8テーマを採択※3し、事業戦略ビジョン※4に基づき研究開発・実証に取り組んでいます。具体的には、電動商用車の商用利用時のデータ収集およびそれを活用した運行管理と一体的なエネルギーマネジメント、充電・水素充填インフラの最適配置などに関するシミュレーション技術を研究開発することで、社会全体および個別事業者におけるエネルギー利用・運行管理などの最適化を実現するスマートモビリティ社会の構築を目指します。

2.「社会全体最適を目指したシミュレーションシステム」構築に向けた運行データ受け入れの開始

本プロジェクトの研究開発内容の一つである「社会全体最適を目指したシミュレーションシステム」の構築には、運行情報・電池などの車両データや充電・水素充填利用情報、地図情報、気象・道路環境情報などが必要になります。このたび、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、バス・タクシー・トラックの運輸事業者が主体となり電動商用車の実証実験を通じて得られた各種データ※5の受け入れを一部の事業者から開始しました。

商用利用時の車両や充電・水素充填インフラなどのデータを取得し、それらを繰り返しシミュレーションシステムへフィードバックすることで、より高精度な運行管理と一体的なエネルギーマネジメントシステムの構築ができます。このシステムの活用により、電動商用車の大量普及期に事業者のコストやリソースの負担を極限まで軽減し、運行することも可能になります。

電動商用車に関するデータは、社会全体および個別運輸事業者におけるエネルギー利用・運行管理などの最適化に加え、災害時の外部給電による支援やスマートシティーで活用されるさまざまなデータと統合することによって新たなサービスの創出にも役立つものとなり得ます。

本プロジェクトにおいて、データ提供を開始した事業者は以下のとおりです。

【データ提供を開始する事業者またはコンソーシアム】

ス:
関西電力株式会社(幹事)、大阪市高速電気軌道株式会社、株式会社ダイヘン、株式会社大林組、東日本高速道路株式会社
タクシー:
GO株式会社(旧社名:株式会社Mobility Technologies)
トラック:
Commercial Japan Partnership Technologies株式会社

※今後、さらに他の事業者も順次提供を開始していく予定です。

3.今後の予定

NEDOは本プロジェクトで、運行データの管理・分析を通じて運行管理シミュレーションの最適化技術や充電・水素充填インフラ設備の評価手法開発、電力情報データの整備などに取り組みます。商用車のカーボンニュートラルに向け、電動商用車の導入と同時に商用利用時のエネルギーおよび運行効率を最適化するDXの構築を目指し、より一層大量のデータの受け入れを進めます。個別最適な事業者を軸にした各種システム構築の取り組みは各国で進んでいますが、本プロジェクトによる社会全体の最適化に向けた実証が進めば、世界に先駆けた取り組みとなり得ます。

【注釈】

※1 グリーンイノベーション基金事業
日本の掲げる「2050年カーボンニュートラル」に向けて、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などに対して研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援する事業です。本基金事業はグリーン成長戦略で実行計画を策定している重点分野を支援対象としています。また、令和4年度第2次補正予算により3000億円が、令和5年度当初予算により4564億円が基金に積み増しされています。
別ウィンドウで開きます特設サイト:グリーンイノベーション基金事業
※2 本プロジェクト
  • :グリーンイノベーション基金事業/スマートモビリティ社会の構築/スマートモビリティ社会の構築に向けたEV・FCVの運行管理と一体的なエネルギーマネジメントシステムの確立
  • 事業期間:2022年度~2030年度
  • 事業概要:別ウィンドウで開きますスマートモビリティ社会の構築
※3 8テーマを採択
(参考)NEDOリリース(2022年7月19日)サイト内リンクグリーンイノベーション基金事業、「スマートモビリティ社会の構築」に着手
※4 事業戦略ビジョン
本プロジェクトに参画する企業などの経営者がコミットメントを示すため、事業戦略や事業計画、研究開発計画、イノベーション推進体制などの詳細を明らかにした資料です。
下記リンク先から「実施体制 事業戦略ビジョン」タブを押下して、ご確認ください。
別ウィンドウで開きますスマートモビリティ社会の構築
※5 各種データ
下記リンク先のP34~36 別表1 提供分類A項目をご参照ください。
(参考)PDFグリーンイノベーション基金事業「スマートモビリティ社会の構築」プロジェクト公募要領 2022年3月14日(2022年4月13日 一部改訂)

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 省エネルギー部 担当:原田、内海、萬木(ユルギ)
TEL:044-520-5199 E-mail:gi-smartmobility[*]nedo.go.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本(信)、瀧川、黒川、橋本、根本
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。

  • 新聞、TVなどで弊機構の名称をご紹介いただく際は、“NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)”または“NEDO”のご使用をお願いいたします。

関連ページ