業界初、省エネ家電製品を実現するインテリジェントパワーモジュールを開発
―新開発のパワーデバイスで家庭の電力消費量削減に貢献します―
2025年4月15日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
NEDOの助成事業を通じて、三菱電機株式会社は、エアコンのコンプレッサー駆動用インバーター回路部の電力消費量を大幅に削減できるインテリジェントパワーモジュールを開発しました。
今回の改善は、従来のSi(シリコン:ケイ素)パワー半導体チップに加えて、エアコンのさらなる高効率運転に貢献可能な高性能のSiC(シリコンカーバイド:炭化ケイ素)パワー半導体チップを業界で初めてパワーモジュールに搭載し、パワー半導体チップの駆動回路設計の最適化を合わせて実施することで達成しました。
三菱電機は、2027年度を目標年度とするエアコンの新省エネ基準見直しに対応したパワーデバイスの開発を進め、家庭の省エネ実現に貢献します。

図1 開発したモジュール(図中左上)のイメージ
1.背景
近年、地球温暖化による気温上昇傾向などを要因とした夏季の電力消費量増加などを抑制するため、2027年度を目標年度とする省エネ基準※1が策定され、家庭用エアコンでは一層の使用電力量削減が求められています。
エアコン室外機の中に搭載されるコンプレッサー駆動用インバーター基板(図2)には、従来から家電製品の制御に使われてきたSiパワー半導体チップを搭載したパワーモジュールが使用されています。しかし、材料特性の観点でSiパワー半導体チップの性能改善は限界に近づいており、使用電力量削減の障壁となっていました。
この課題の解決に向け、NEDOは助成事業「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」※2において、2021年度より三菱電機と共同で、Siパワー半導体チップよりもさらに効率改善が可能な高効率のSiCパワー半導体チップを搭載し、エアコンの使用電力量を削減する技術開発に取り組んできました。

図2 エアコンの室内機/室外機構成イメージ
2.今回の成果
今回、三菱電機はSiパワー半導体チップより高効率だが高価格のSiCパワー半導体チップに単純に置き換えるのではなく、業界で初めて※3Siパワー半導体チップとSiCパワー半導体チップを並列接続し、エアコンの動作状態に応じて両方のチップの特性を引き出せる技術の開発に成功しました。
具体的には、並列接続素子に適した新たな駆動回路ICとパワー半導体チップを同じモジュール(図1)内に収める実装技術の開発を行い、これらの技術を集積したインテリジェントパワーモジュール※4:Intelligent Power Module(IPM)を開発しました。この新開発IPMの試作品動作特性から推定したエアコン動作条件で試算した結果、Siパワー半導体チップのみを搭載した従来IPMのコンプレッサー駆動用インバーター回路部と比較して年間消費電力量を41%削減できることを確認しました。新たに開発したIPMの外寸は、従来のSiパワー半導体チップ搭載品と同一のため、従来のIPMを搭載している既存基板での置き換えも容易となっています。
本成果により、三菱電機は省エネルギーに寄与する優れた成果をあげた事業者を表彰する2024年度のNEDO省エネルギー技術開発賞※5理事長賞を受賞しました。2025年1月29日に「ENEX2025 第49回地球環境とエネルギーの調和展」のNEDOブースで開催された表彰式では、三菱電機の竹見政義上席執行役員が本事業に関する特別プレゼンテーションを実施しました(図3)。

図3 ENEX2025での特別プレゼンテーション(左)、NEDO省エネルギー技術開発賞ロゴ(右)
3.今後の予定
三菱電機は2025年4月22日から、主にエアコンなどへの搭載を目標として、開発したIPMのサンプル出荷を開始し、2027年度を目標年度とする新省エネ基準達成に協力していきます。これにより、2050年カーボンニュートラルへの道筋を示し、家電分野における温室効果ガスの排出量削減に貢献します。
NEDOは引き続き、経済成長と両立する持続可能な省エネルギーの実現を目指し、「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略」で掲げる産業・民生(家庭・業務)・運輸部門などにおける重要技術を中心に、2040年に高い省エネ効果が見込まれる技術の開発について、事業化までシームレスに支援します。
【注釈】
- ※1 省エネ基準
- 「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」に基づき経済産業省が定めた、エネルギー消費効率の向上を図ることが必要な電化製品などに対して製造事業者が目標年度までに満たすべき基準のことです。
- ※2 「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」
- 事業名:脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム/家電用インテリジェントパワーモジュールの開発
- 事業期間:2021年度~2023年度
- 事業概要:脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム
- ※3 業界で初めて
- 2025年4月15日現在、民生用途向けインテリジェントパワーモジュールへの搭載として業界初となります。
- ※4 インテリジェントパワーモジュール
- 電力を効率的に制御するために、パワー半導体と駆動回路や保護回路を組み合わせたモジュールのことです。
- ENEX2025 三菱電機の展示パネル
- ※5 2024年度のNEDO省エネルギー技術開発賞
- ENEX2025で「NEDO省エネルギー技術開発賞」として9テーマを表彰しました
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO フロンティア部 脱炭素省エネチーム 担当:岩本、小林 TEL:044-520-5281
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 経営企画部 広報企画・報道課 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp
E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。
- ※新聞、TVなどで弊機構の名称をご紹介いただく際は、“NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)”または“NEDO”のご使用をお願いいたします。
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