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2040年以降の新産業の創出に向けた「フロンティア育成事業」が始動しました
―プログラムディレクター2名を指名し、研究開発テーマ11件を採択―

2025年5月23日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

NEDOは、2040年以降の新産業の創出を目指し、国として新たに取り組むべき領域(フロンティア領域)の研究開発および事業化を推進する「フロンティア育成事業」(以下、本事業)を開始しました。今回は「極限マテリアル」および「地下未利用資源の活用」をフロンティア領域と位置づけ、フロンティア領域における研究開発課題の探索・選定を行い、技術開発から社会実装に至るまで一貫して推進するため、プログラムディレクター(以下、PD)を指名しました。

「極限マテリアル」領域には高温超電導およびパワーレーザーを、「地下未利用資源の活用」領域には天然水素を研究課題として設定し、研究課題ごとに研究開発テーマを公募しました。

採択審査の結果、このたび合計11件のテーマ(高温超電導3件、パワーレーザー3件、天然水素5件)を採択しました。

1.フロンティア育成事業の概要

NEDOイノベーション戦略センター(TSC)は、Innovation Outlookとして、各分野の国内外の技術、市場、政策の動向を俯瞰(ふかん)し、国として新たに取り組むべき領域(フロンティア領域※1)を探索し、経済産業省に対してフロンティア領域の候補を提案することとしています。経済産業省はNEDOからの提案などを勘案し、フロンティア領域について集中的に育成します。

本事業は、脱炭素社会の実現と新産業の創出を目指し、将来的に高い成長が期待されるフロンティア領域における初期段階の研究開発を支援するものです。NEDOは各領域にPDを配置し、研究の進捗(しんちょく)管理に加え、事業化の可能性や出口戦略の検討も行います。これにより、国家プロジェクトへの発展やスタートアップの創出など、研究成果の社会実装を加速させます。

NEDOは本事業を通じて、日本が抱える研究開発から事業化に至る割合が少ないという課題に対応し、特に需要の不確実性が高いGX分野※2において、事業リスクへの早期対応を可能にします。2040年頃の社会実装を見据え、脱炭素と経済成長の両立を実現する革新的技術の育成と、持続可能な産業基盤の構築に貢献します。

図1 NEDOの描くフロンティア事業の仕組みの画像

図1 NEDOの描くフロンティア事業の仕組み

2.PDの概要

PDは、各フロンティア領域における研究開発課題の探索・選定を行い、技術開発から社会実装に至るまでの戦略を策定します。さらに、経済産業省関係部局、NEDO関係部などの関係機関や各フロンティア領域の研究開発や社会実装に係る有識者と連携しながら、その実行から評価および見直し、国家プロジェクトの企画立案、民間投資の促進に至るまで、一貫して推進するための業務を担います。

PDは、当該領域に関する技術、市場、政策の動向に関する幅広い知見に加え、調査分析や情報発信の能力、プロジェクトマネジメントや事業開発の経験を有し、高い指導力と交渉力を備えている者から、NEDO理事長が指名します。

3.PD指名および採択テーマ

本事業で今回取り組むものとして、(1)「極限マテリアル」と(2)「地下未利用資源の活用」をフロンティア領域に特定し、そのうち領域(1)には【1】高温超電導および【2】パワーレーザー、領域(2)には【3】天然水素を研究課題として設定しています。

「極限マテリアル」は、例えば、耐熱性、強度、耐食性などの材料特性機能や、光学特性、熱伝導、導電性などの材料物性機能を極限まで高めるアプローチ、あるいは、超高温、超高圧、プラズマなどの極限環境下で機能させるアプローチによって生まれる新しいマテリアルであり、極限マテリアルの技術開発を他国に先駆けて進めることにより、マテリアル起点のイノベーションを誘起し、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーにつながることが期待されます。

図2 「極限マテリアル領域」の具体的な研究開発課題の例の画像

図2 「極限マテリアル領域」の具体的な研究開発課題の例

「地下未利用資源の活用」では、石油、石炭、天然ガスなどの従来型の地下資源に対して、今回、特に、天然水素に焦点を当てました。天然水素は、米国エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)や国際エネルギー機関(IEA)などで世界的に注目される一方、地下深部での生成・移動・集積メカニズムの詳細は分かっていません。そこで、天然水素資源の活用に向けて必要不可欠な研究テーマを実施し、将来的な低炭素水素の供給源としての可能性を見いだしていきます。

図3 「地下未利用資源の活用」領域の具体的な研究開発課題の例の画像

図3 「地下未利用資源の活用」領域の具体的な研究開発課題の例

このたび、フロンティア領域における研究開発課題の探索・選定を行い、技術開発から社会実装に至るまで一貫して推進するため、2名のPDを指名しました。研究課題ごとに研究開発テーマを公募し、合計11件のテーマ(高温超電導3件、パワーレーザー3件、天然水素5件)を採択しました。

■PD

・「極限マテリアル」領域:藤本 辰雄氏(NEDO TSC 参事)

1986年京大卒、新日本製鉄(現日本製鉄)入社。1995年英国ケンブリッジ大学にてPh.D.取得(物理学)。2019年NEDO技術戦略研究センター(現イノベーション戦略センター)ナノテクノロジー・材料ユニット ユニット長。磁性や超電導、および半導体に関わる材料研究に広く従事した経験を基にマテリアル産業に係るインテリジェンス活動に取り組んできた。2025年1月に内閣府マテリアル戦略有識者会議で「産業視点でのマテリアルのイノベーション」について報告し、同会議提言の取りまとめに貢献。また2025年3月にはNEDO TSC Foresightセミナーを企画し、「産業技術のフロンティアを拓く新たなマテリアルによるイノベーション」を発表。日本のマテリアル産業のイノベーション創出に取り組んでいる。2025年4月より現職。

・「地下未利用資源の活用」領域:仁木 栄氏(NEDO TSC フェロー)

1991年米国カリフォルニア大学サンディエゴ校にてPh.D.取得。同年、通産省電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)入所。太陽光発電、再生可能エネルギー分野で要職を歴任し、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた研究をけん引。2019年NEDO技術戦略研究センター(現イノベーション戦略センター)再生可能エネルギーユニット(現サステナブルエネルギーユニット)ユニット長、2024年4月から現職。ユニット長として、エネルギー分野の技術戦略の策定などに取り組んできた。「持続可能な社会の実現に向けた技術開発総合指針2023」の策定にあたっては、TSC横断的な総合指針チームのチーム長として中心的な役割を果たした。また、2024年1月から約1カ月間の長期滞在などを通じて、ARPA-Eとの関係を構築しており、2025年2月にはARPA-EのPDの参加を得て国際天然水素ワークショップを開催した。岐阜大学客員教授、山形大学客員教授。

  • 図4 PD指名式の様子(左から藤本氏、岸本センター長、斎藤理事長、仁木氏)の画像
    図4 PD指名式の様子(左から藤本氏、岸本センター長、斎藤理事長、仁木氏)

■採択テーマ

(1)極限マテリアル/【1】産業用高温超電導電磁石開発に資する集合導体化技術の開発
採択テーマ名 実施予定先
高温超電導スパイラル集合導体の極限長尺化技術の開発 学校法人関西学院/国立大学法人九州大学
産業用レアアース系高温超電導導体の開発 株式会社フジクラ/国立研究開発法人産業技術総合研究所
産業用電磁石の極限性能に資する高温超電導集合導体の研究開発 古河電気工業株式会社/国立研究開発法人産業技術総合研究所/国立大学法人京都大学/大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
(1)極限マテリアル/【2】産業用パワーレーザー開発に資する光学材料およびデバイスの開発
採択テーマ名 実施予定先
半導体レーザーの極限的な高出力化の研究開発 浜松ホトニクス株式会社
超高レーザー耐力および超低損失ガスオプティックスの研究開発 国立大学法人電気通信大学
多層接合と革新的材料技術で切り拓く高出力パルスレーザーの開発 株式会社EX-Fusion
(2)地下未利用資源の活用/【3】天然水素の生成増進・回収実現に向けた研究開発
採択テーマ名 実施予定先
超塩基性岩からの天然水素回収・生成増進に関する研究開発 国立大学法人東北大学
日本の天然水素ポテンシャル評価と人工増進技術の研究開発 ENEOS Xplora株式会社
天然水素生成や増進回収における要因解明に係る研究開発 国立大学法人北海道大学
水素生成可能な岩石の探索と増進を踏まえた評価に係る研究開発 国立研究開発法人産業技術総合研究所
九州地域の天然水素資源開発に関する研究開発 国立大学法人九州大学

【注釈】

※1 フロンティア領域
将来的なポテンシャルが大きい一方で、技術開発や市場の不確実性といったリスクの高さ、巨額の研究開発設備投資の必要性などの理由で、国としては重点投資していきたいにも関わらず、個社だけでは投資が進みにくい領域です。
※2 GX分野
〈1〉脱炭素成長型経済構造移行推進戦略を踏まえて、二酸化炭素(CO2)の排出削減に向けた野心的な目標を掲げるなど世界規模でのカーボンニュートラルの実現および日本の産業競争力の強化のためのイノベーションを創出しうるものを対象とし、そのうち、太陽光・風力・水素などの非化石エネルギーの開発および利用の促進、次世代のリチウムイオン電池、非化石由来の原料に転換する革新素材、その他省エネルギー実現に資する半導体・革新素材・人工知能(AI)の開発などのエネルギー利用の高度化の促進、または事業所などから排出されるCO2の排出の抑制に係る事業であること、〈2〉脱炭素成長型経済構造移行推進戦略にある「国による投資促進策の基本原則」に則したものであること、を満たすポテンシャルを有する事業を含む分野です。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO イノベーション戦略センター E-mail:tsc-fr[*]ml.nedo.go.jp

(「NEDO先導研究プログラム」についての問い合わせ先)

NEDO フロンティア部 先導研究ユニット E-mail:enekan[*]nedo.go.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 経営企画部 広報企画・報道課 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。

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