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植物による有用タンパク質の大量生産技術を開発しました
―バイオものづくり分野の実証基盤「植物バイオファウンドリ」のサービスを開始しました―

2025年7月7日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
千代田化工建設株式会社

NEDOの「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」(以下、本事業)で、千代田化工建設株式会社は、植物を用いた有用物質を生産する新規基盤技術の実証設備を建設し、有用物質として世界初となるヒトII型コラーゲンを実証モデルタンパク質に選定して生産実証に成功しました。植物を用いることで、ワクチンなどの医薬品や、再生医療等製品、化粧品、機能性食品など多様な製品をアニマルフリーで安価に生産できる技術であり、温室効果ガスの排出抑制効果も期待できます。

この設備を、植物バイオものづくりの実用化開発を受託する、国内初の「植物バイオファウンドリ」として立ち上げ、さまざまな機関や企業の研究開発を支援していきます。

なお、本内容を2025年7月9日から11日に東京ビッグサイトで開催される「インターフェックスWeek東京/再生医療EXPO東京」の千代田化工建設ブース内に展示します。

植物バイオ実証棟の写真
図1 植物バイオ実証棟外観と栽培中の植物

1.背景

植物や微生物などの生物を用いて物質を生産する技術(バイオものづくり)は、従来の化学プロセスに比べ、省エネルギーであるとともに、原料を化石資源に依存しないため、炭素循環型社会の実現や持続的経済成長に導くものづくりへの変革が期待できます。一方で、バイオものづくりを実現させるためには、石油由来製品に比べて生産効率が低いことやバイオ製品の物性が劣ることなどが課題となっています。

微生物による有用物質生産では基盤技術の実証設備の整備が進められています。しかし、分子量が数十万に達する巨大分子の発現や、遺伝子翻訳後の修飾によって複雑な分子構造の有用物質を生産することは、微生物では難しいのが現状です。その一方で、植物を用いると、このような有用物質が生産できると期待されるため、植物の基盤技術の実証設備整備が急務となっていました。

このような背景の下、NEDOは2020年度から本事業※1を実施しており、その一環として2022年度から千代田化工建設は、株式会社ニッピ、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人大阪大学生物工学国際交流センターと共同で、「植物による高度修飾タンパク質の大量生産技術の開発」(以下、本開発)にて世界初の植物によるヒトII型コラーゲンの大量生産技術を実証するとともに、植物によるバイオものづくり分野の実証基盤の構築に取り組んできました。

  • 図2 本開発の内容

2.本開発の成果

本開発では実証モデルタンパク質として、軟骨の主要な成分であるヒトII型コラーゲンを設定し、植物を用いて、II型コラーゲンおよび翻訳後修飾酵素の発現制御と、生成したヒトII型コラーゲンの抽出・精製・分析に関する技術を4者共同研究で開発しました。また、千代田化工建設が構築した実証基盤に、今回開発したスケールアップ技術および大量生産技術を実装したことで、植物体重量で数グラムから数十キログラムまでの対応が可能となりました。ヒトII型コラーゲンは、大腸菌では生産が困難な複雑な翻訳後修飾を必要とするタンパク質です。遺伝子組み換えにより植物を用いたヒトII型コラーゲン生産(アニマルフリー※2)は世界初の試みとなります。本開発で、動物由来製品と近い性質を持つヒトII型コラーゲンタンパク質を、植物を用いて作製可能であることを確認しました。

また、千代田化工建設は今回建設した実証設備を、国内初となる植物によるバイオものづくり分野の実証基盤「植物バイオファウンドリ」として運営すべく、稼働を開始しました。

  • (左)植物宿主由来ヒトII型コラーゲンを用いて作製したゲル
    (中)分子を再構成させて作った線維の原子間力顕微鏡像
    (右)軟骨細胞の接着実験。植物宿主由来のコラーゲンも動物組織由来コラーゲンと同様の接着活性を示す。

    図3 植物宿主由来組み換えヒトII型コラーゲン
【植物バイオファウンドリ概要】 動画リンク 別ウィンドウで開きます紹介ビデオ
  • ・建設場所:千代田化工建設 子安リサーチパーク(神奈川県横浜市神奈川区)
  • ・期待される機能:さまざまな機関や企業の植物バイオものづくりの研究開発を支援し、円滑な社会実装化に貢献すること
  • ・植物バイオファウンドリとしての提供サービス
    • ・植物を用いた物質生産の試験受託
    • ・植物を用いた物質生産のプロセス開発
    • ・ラボスケールからベンチ・パイロットスケールへのスケールアップ検討
    • ・パイロットスケールから商用スケールまでのスケールアップ検討
    • ・フィージビリティスタディなど

3.今後の予定

今後、千代田化工建設は、この実証設備を「植物バイオファウンドリ」として機能させ、さまざまな機関や企業が開発する有用物質製品について、プロセス開発やサンプル製造の受託を行い、実用化に向けた支援サービスを提供していきます。今回のNEDO事業期間で得られた多くの貴重な経験や知見を今後のサービス事業に生かし、植物バイオものづくり産業の発展に貢献します。

NEDOは、このような産業用物質生産システムの実証例を増やし、バイオ由来製品の社会実装加速や新たな製品・サービスの創出することで日本のバイオエコノミー活性化と温室効果ガスの排出量削減に貢献します。

【注釈】

※1 本事業
※2 アニマルフリー
動物性の素材を使わない製品のことです。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO バイオ・材料部 スマートセルチーム 担当:小笠原、木下、大和田
TEL:044-520-5220 E-mail:bioproduction[*]ml.nedo.go.jp

千代田化工建設 IR・広報・サステナビリティ推進セクション 担当:池尻、宮崎
E-mail:chiyoda_pr[*]chiyodacorp.com
お問い合わせフォーム

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 経営企画部 広報企画・報道課 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。

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