国内初、一般水力発電の調整力強化に向けた技術開発に着手します
―再生可能エネルギーの拡大に伴う燃料費・CO2排出量などの社会コストの大幅な低減を目指します―
2026年1月28日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
NEDOは、委託事業である「電源の統合コスト低減に向けた電力システムの柔軟性確保・最適化のための技術開発事業(日本版コネクト&マネージ2.0)/研究開発項目3-2 水力発電の柔軟性向上のための技術開発」(以下、本事業)の一環として、国内で初めて、一般水力発電の調整力強化を目的とした技術開発に着手します。
NEDOは本事業で、一般水力発電が新たに調整力を発揮するための技術的な課題を解決し、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の拡大に伴う燃料費・二酸化炭素(CO2)排出量などの社会コストの大幅な低減を目指します。
1.概要
太陽光発電や風力発電といった再エネの導入拡大に伴い、電力系統の経済的かつ安定的な運用に不可欠な火力発電の割合は、相対的に低下する傾向にあります。こうした状況において、火力発電と同じく同期発電機※1である水力発電にはより一層の期待が寄せられています。
今後、国内の一般水力発電※2では、ノンファーム型接続※3をする設備や固定価格買取制度の適用期間が終了する設備の増加、さらにファーム型接続※3済みの既設設備の大規模改修が見込まれています。再エネの出力が変動する際、電力の需要と供給のバランスを維持するために、燃料費を伴う火力発電の出力や環境価値の高い再エネの出力を増減させるなどの「調整力」が必要となりますが、これらの一般水力発電が新たに調整力を発揮する(部分負荷運転や高速・高頻度な出力調整・起動停止を行う)ことにより、火力発電などの燃料費や再エネの出力制御量、CO2排出量といった社会コストの大幅な低減が見込まれます。
一方で、一般水力発電が新たに調整力を発揮するには、以下のような課題があります。
- ・振動や壊食など※4の水車各部への負担増加による、「水車の信頼性」および「耐久性の低下に対する保守コストの増加」への対策が必要となること
- ・出力制御によって短時間で出力を下げる際、流れ込み式発電所での溢水(いっすい)※5、調整池式・貯水池式発電所での無効放流量増加による発電量減少と発電事業者の収益減
- ・出力を短時間で上げる際、河川水位の急激な上昇に伴う流域の安全性確保の必要性
これらの課題を解決し、発電事業者にとってのリスクを低減するためには、技術開発による解決が不可欠です。
このような背景の下、NEDOは、一般水力発電設備の拡大と大規模改修を見込むことを好機と捉え、国内初となる本事業に着手します。米国や欧州といった諸外国でも同様に一般水力発電の調整力を強化させるプロジェクトが進む中、「運用上の溢水」、「減電による収益減」、「水車・発電機の劣化」という課題に対し、日本の人財と技術力を結集して解決を図ることがねらいです。
NEDOは、今後ノンファーム型接続をする中小水力発電とファーム型接続済みの大規模水力発電を対象に経済性を確保しつつ、新たに調整力を発揮するための技術開発を一体的に実施し、水力発電による調整力の発揮を通じた社会コストの低減を目指します。
2.実施内容
【1】事業名
電源の統合コスト低減に向けた電力システムの柔軟性確保・最適化のための技術開発事業(日本版コネクト&マネージ2.0)/研究開発項目3-2 水力発電の柔軟性向上のための技術開発
【2】予算
28億円(2025年度) ※「日本版コネクト&マネージ2.0」事業全体の予算
【3】実施期間
2025年度~2028年度
【4】実施予定先
一般財団法人電力中央研究所
東芝エネルギーシステムズ株式会社
学校法人早稲田大学
国立大学法人信州大学
国立大学法人東北大学(再委託)
図 水力発電の柔軟性向上のための技術開発実施スケジュール
実施内容の詳細は、以下の事業内容資料をご覧ください。
【注釈】
- ※1 同期発電機
- 火力発電機などの発電機は、電気を発生させるために回転子を回転させて発電します。この回転速度が電力系統の周波数と同期している発電機のことです。こうした発電機は、自らの回転子を一定回転に維持しようとする力を持ち、電気的な瞬時の変化に耐えることができ、電力系統の周波数や電圧安定性の維持などの役割を担っています。
- ※2 一般水力発電
- 水力発電は、河川の流れやダムを利用して水のエネルギーを水車により機械エネルギーに変換し、さらに発電機により電気エネルギーに変化する発電システムです。その水のエネルギーを得る方式は、運用上、「流れ込み式」、「調整池式・貯水池式」、「揚水式」に分けられます。このうち揚水式を除くものを一般水力発電といいます。
- ※3 ファーム型接続/ノンファーム型接続
- 送変電設備の事故などがない平常時に発電事業者が契約した容量分の電力を電力系統へ送ることのできる接続方式をファーム型接続と呼びます。一方で、平常時であっても、必要な容量をあらかじめ確保せず、電力系統の空いている容量に合わせて出力制御を行うことを条件にした接続方式をノンファーム型接続と呼んでいます。
- ※4 振動や壊食など
- 水力発電所では、水車の高速回転や頻繁な出力変動により、機械部品に振動や摩耗、壊食(キャビテーションによる金属の損傷)などの負荷がかかります。特に部分負荷運転や頻繁な起動停止を行うと、これら負担がかかりやすく劣化が進行しやすくなり、保守コストの増加や設備寿命の短縮につながる可能性があります。
- ※5 流れ込み式発電所での溢水
- 水力発電所で、発電に使いきれなかった水がダムや水路からあふれ出ることを指します。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 再生可能エネルギー部 エネルギーシステムユニット 系統連系チーム 担当:小笠原、下里
TEL:044-520-5269 E-mail:powergrid[*]nedo.go.jp
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 経営企画部 広報企画・報道課 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp
E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。
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