手術室に「頭脳」をもたらす外科特化型生成AIを開発しました
―手術現場での実証に成功、事業化へ本格始動します―
2026年3月27日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
Direava株式会社
NEDOと経済産業省が実施する生成AI開発力強化を目的としたプロジェクト「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)」の一環として、Direava(ディリーバ)株式会社は、「外科手術支援のための視覚・言語統合型AI基盤モデルの開発」(以下、本事業)に取り組み、この度、手術状況をリアルタイムに理解し、対話する国内初の外科特化型生成AI(Surgical VLM)を開発しました。
外科領域で活用されている従来の生成AIは、患者の臓器や患部の認識において、画像認識(目)による補助に留まっていました。今回開発した外科特化型生成AIは、手術状況から「次にどうすべきか」を「医師の頭脳」のように理解し、外科医と高度な対話を行う画期的なシステムです。2026年2月20日に慶應義塾大学病院において実際に胃癌の手術現場における実証試験を実施し、医療教育現場の要求水準(解剖学的正確性、臨床的有用性、文章の流暢性)を満たすことで有用性の確認にも成功しました。
昨今、医療現場では高度な医療技術を継承した若手人材の育成が課題となっております。今後、ディリーバは2026年中の事業化(サービス提供開始)に向けた準備を本格始動し、胃癌手術以外での実証も進めます。これにより、外科医の育成や高度な手術教育を強力に後押しし、将来的な医療品質の向上と安全性の確保に貢献します。
図1 開発した外科特化型生成AIを活用した手術の様子
1.背景
NEDOは2024年度から、生成AIに関する研究開発と支援を加速するべく、経済産業省とともにGENIACプロジェクトを推進してきました。GENIACでは汎用基盤モデルからさまざまな領域特化の基盤モデルの開発に関する支援を実施しており、2026年3月末時点でのべ53社が生成AI基盤モデルの開発を実施しております。
今回成果を創出したディリーバはそのうちの1社であり、慶應義塾大学医学部発の医療系スタートアップ企業です。これまでにAIを搭載したプログラム医療機器「手術映像認識プログラム・キノスラ」※1について、2025年12月9日付で厚生労働大臣より製造販売承認を取得するなど、医療系AIとそれを用いたシステムの開発を行ってきました。
同社は2025年7月にGENIACに採択され、外科領域のAI開発に関し、自社開発した基盤モデルをベースに大量の術中画像と自然言語キャプションのデータセットを学習させることで、これまでにない機能を実装した国内初※2の外科特化型生成AI「Surgical VLM」を開発、その成果を実際の手術現場で実証しました。なお、開発したAIの評価にあたっては、慶應義塾大学病院の協力のもと、手術状況の的確な把握はもとより、外科医の育成にも重要と考えられる項目を整備しました。
図2 開発した外科特化型生成AIの評価項目および性能
2.今回の成果
(1)手術の文脈を理解する「頭脳」を持つ生成AIの開発
これまで外科領域の生成AIの活用では、画像認識によって患者の臓器や血管などを特定する「解剖認識(=目の機能)」の活用が進められてきました。しかし、認識された情報に対して、複雑な手術の手順、患部の状況を理解し、「次にどうすべきか」「何に気をつけるべきか」を推論・対話できる「高度な状況理解(=頭脳の機能)」は未実装であり、当該AIにおける大きな課題となっています。
このような背景の下、ディリーバは医療教育現場が求める要求水準を満たす、外科特化型生成AIの開発に取り組み、2026年2月20日には実際の手術環境下において本AIを稼働させ、実証試験を完了しました。
今回開発した外科特化型生成AI「Surgical VLM」は、大量の高品質な術中画像および構造説明文のペアとなったデータセットを学習した、外科手術における術中画像を入力として解剖構造や手術状況を認識し、日本語による説明文を自動生成する視覚・言語統合型AI基盤モデルとなります。
本事業※3においてディリーバは医療現場の膨大なデータを生成AIに学習させることで、手術の進捗をリアルタイムに把握し、外科医や医学生と対話可能なモデルの構築に成功しました。これは現在商用化されている既存の外科領域のAIシステムにはない機能であり、世界に類を見ない外科特化型生成AIの開発に成功したものです。
(2)慶應義塾大学病院での実証試験
今回開発した外科特化型生成AI「Surgical VLM」の臨床有用性や教育効果を検証するため、2026年2月20日に慶應義塾大学病院手術室にて実証試験を実施しました。実証実験においては手術教育として必要と考えられる評価項目を同大学病院協力のもとで設定し、解剖学的正確性、臨床的有用性、文章の流暢性における評価で80%以上を満たすかどうかを検証。本試験を通じて、解剖学的正確性が84.7%、臨床的有用性が82.9%、文章の流暢性が97.4%と目標値を満たす結果となったことから、開発した生成AIが実際の外科手術の進行状況を正確に認識することが確認されるとともに、手術現場で求められる適切な情報の提示や、専門的な外科用語を用いた自然な対話が成立するなど、医療教育現場における実践的な有用性も実証しました。
図3 手術室での実証の様子
3.今後の予定
ディリーバは今回開発した外科特化型生成AIの事業化に向けた研究開発と実証を引き続き推進し、2026年中の事業化(サービス提供開始)を目指し、対応可能な症例の拡大やシステム操作性の向上に向けた実証実験を追加実施します。
また、今回開発した外科特化型生成AIは、日本の専門医が監修した高品質な医療データのみを厳選して学習させており、生成AI特有のハルシネーション※4を極限まで排除した安全な「日本発特化型モデル」となっています。今後はこのモデルの社会実装を通じて、医療データの安全保障を確保しつつ、日本が世界に誇る「外科技術」の継承や外科教育の高度化に寄与し、将来的な医療現場全体の安全性向上に貢献します。
【注釈】
- ※1 プログラム医療機器「手術映像認識プログラム キノスラ」
- 本製品は2025年12月9日付で厚生労働大臣より製造販売承認を取得したロボット支援食道悪性腫瘍切除術における手術映像認識プログラムです。(承認番号 30700BZX00326000) AIが手術映像内の左右反回神経をリアルタイムで検出し、強調表示することで、医師の認識を補助します。
- ※2 国内初
- 2026年3月現在、ディリーバ調べ(日本国内における、手術状況をリアルタイムに理解・対話する外科特化型生成AIの開発および臨床実証として。主要学術論文データベースおよびプレスリリース配信サービスなどの検索に基づく)
- ※3 本事業
- 事業名:ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発
- /外科手術支援のための視覚・言語統合型AI基盤モデルの開発
- 事業期間:2025年8月4日~2026年3月31日
- 事業概要:ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業
- ※4 ハルシネーション
- 生成AIがもっともらしい「嘘」の情報を、事実であるかの様に自信をもって生成してしまう現象です。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO AI・ロボット部 生成AIチーム 遠藤、池田、渡辺 TEL:044-520-5241
Direava株式会社(ディリーバ)
代表者:代表取締役 竹内 優志 E-mail:info[*]direava.com ウェブサイト
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 経営企画部 広報企画・報道課 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp
E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。
- ※新聞、TVなどで弊機構の名称をご紹介いただく際は、“NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)”または“NEDO”のご使用をお願いいたします。