中国のスマートグリッドと超高圧送電網の状況
中国は発電量が年々増加しています。それにともない、スマートグリッドなどの技術を用いてグリッドを安定させる必要が生じています。
中国における
- スマートグリッドが必要になっている背景
- 蓄エネ・電力品質管理市場の状況
- スマートグリッドに関するモデル事業と政府の技術開発支援状況
- 超高圧送電網や次世代送配電網の構築と技術開発状況
についてまとめました。
本レポートの概要
(1)スマートグリッドの必要性の増加
- 中国の発電量は年々増加し、2019年も前年比4.7%増加して、7.3兆kWhとなった。
このうち再エネの発電量も年々増加し、発電量全体に占める再エネの割合は、2019年は26%(太陽、風力、水力)となり、特に発電出力が不安定な太陽光と風力は合計9%を占めている。 - 一方で、電力投資に占めるグリッド建設投資の割合が2008年に46%だったものが2019年に61%まで増加しているように、グリッド建設投資の負担が年々増加。
- 中国政府は、電力の市場取引を増加させる政策をとっており、市場取引される電力は一般の電力よりも安価になる傾向がある。ただし、省を超えた取引の割合はまだ低い
→スマートグリッドなどの技術を用いて、新規のグリッド建設を抑えつつ、グリッドを安定させる必要性が向上しているといえる。
(2)蓄エネ・電力品質管理市場の状況
○蓄エネルギー技術
- 中国の蓄エネ設備の出力能力は31GWと巨大だが、そのうち96%は揚水発電。電気化学的プロセスの蓄エネは3.3%にとどまり、そのうち72%がリチウムイオン電池、26%が鉛蓄電池、2%がレドックスフロー電池。レドックスフロー電池は蓄エネ全体から見ると0.06%に過ぎない。
○電力品質管理市場
- 電力品質管理関連設備市場は186億元(2800億円)程度の市場であり、UPS(33%)、キャパシタ・リアクタンス(32%)、SVG(13%)などとなっている。
(3)スマートグリッドに関するモデルプロジェクトと政府技術開発支援
○スマートグリッド関連技術開発の政府支援
- 科技部・財政部などが中心となりスマートグリッド技術に関する18プロジェクト、3.7億元(約56億円)のプロジェクトを実施。一方、国家エネルギー局は一般に研究開発予算が少なく、技術開発支援は少ない。
○スマートグリッドに関するモデルプロジェクト
- 仮想発電所(VPP)については、上海市や江蘇省でエリア全体・10MW以上の大規模プロジェクトが実施されている。
- 中国の大規模グリッド企業である国家電網は、産業パーク全体や開発地域全体といったエリア単位での総合サービスプロジェクト多数展開している。ここではエネルギー消費量のリアルタイム管理や再エネ・蓄エネなどを組み合わせたサービスを展開。
- 国家電網は、「ユビキタス電力IoT」というプロジェクトも展開。これは電力消費者・送配電事業者・発電事業者・小売り電気事業者のあいだで電力消費・発電量・蓄電量などの情報を共有するもの。同社の計画では2024年までにユビキタス電力IoTを完成させるとしている。
(4)超高圧送電網や次世代送配電網の構築状況と技術開発
○超高圧送電網の整備状況と整備計画
- 中国の特別高圧プロジェクト大規模化建設は、第12次五カ年計画(2011~2015年)期間において「3縦3横網(中国全土で南北3本、東西3本)」の整備計画をたてていた。
- 実際には、2017年末時点で「8交13直(東西8本、南北13本)」計21本の超高圧プロジェクトの建設が完了しており、投資額はすでに4000億元(約6兆円)以上となっている。
- 2018年9月には国家能源局は、新たに「交流」の超高圧送電線(電圧はすべて1000kV以上)の建設を「5直7交」計12本行う計画を発表した。全て2019~2021年に運転開始を見込む。
- 「直流」の超高圧送電網の整備も進んでいる。国家電網は、800kV以上の直流送電網を7つ建設中または建設承認待ちとなっている。特に「昌吉←→古泉」のプロジェクトは電圧が1100kVで距離は3300km、投資額は400億元(6000億円)をみこむ。
○中国製造2025における送変電設備の技術ロードマップの目標
- 中国製造2025では、10の重点分野が定められ、そのうちの一つが電力設備(発電設備、送配電設備など)となっている。中国製造2025の重点分野ロードマップによると、おおむね2020年までに送配電設備では世界レベル・世界先進レベルにすることを目標としている。
中国製造2025重点分野ロードマップにおける送配電分野の主要な目標
本資料は、NEDO北京事務所の職員が中国のスマートグリッドと超高圧送電網の状況の把握のための参考資料として収集したものであり、当機構の意見を代表するものではない。
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最終更新日:2020年6月3日