ロボット用ミドルウェア技術の普及・発展を推進する人材育成講座を開講
―システムインテグレーションコストを削減し、ロボットの活用拡大を目指す―
2021年1月15日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
NEDOは「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」で開発したロボット用ミドルウェア技術を活用し、2021年1月から埼玉大学、東京大学、産業技術総合研究所を拠点とした人材育成講座を開講します。
本講座では、ROSなどのオープンソースソフトウェア(OSS)を活用したロボット用ミドルウェア技術の体験をはじめ、入門コース、産業用ロボット応用コース、画像処理・AI技術の活用コースなどのロボット用ミドルウェア技術を体系的に習得できる講義や演習を無料で提供します。
NEDOは日本の強みのひとつであるロボット産業のさらなる発展のため、本講座を通してシステムインテグレーションのコスト削減を実現するロボット用ミドルウェア技術の普及と、これを活用する人材の育成に継続的に取り組み、この技術の維持・発展を目指します。
1.概要
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2019年度に終了した「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト※1」において、ものづくりおよびサービス分野のロボット未活用領域にロボットを導入する取り組みを進めてきました。この中で、ロボット導入が進まない原因の一つと考えられるロボットのシステムインテグレーション(SI)※2コストの削減を目的として、ROS※3などのオープンソースソフトウェア(OSS)※4をベースとしたロボット用ミドルウェア※5技術を開発しました。すでに海外では、人工知能(AI)などの最先端技術の活用が容易になることから、ロボット用ミドルウェア技術に対して積極的な投資が始まりつつあり、この技術に対応したロボットの製品化や、スタートアップ企業などによるさまざまなロボットシステムの開発が活発になっています。
このような背景のもと、NEDOはロボット用ミドルウェア技術の維持・普及・発展を担う拠点を国立大学法人埼玉大学、国立大学法人東京大学、国立研究開発法人産業技術総合研究所に設置し、ロボット・システムインテグレーションを加速する人材育成講座の開講およびロボット用ミドルウェア技術を普及させるための人的交流の支援、人材育成講座を支える周辺研究に取り組みます。これにより、ロボット用ミドルウェア技術を活用する人材や技術の発展に貢献する人材を育成するとともに、技術の継続的な維持・発展を行う仕組みを整え、普及を進めることでロボット・システムインテグレーションコストの削減によるロボットの活用拡大に貢献します。さらに、拠点を中心とした多方面との人材交流など関連技術を含めた新たな技術シーズの発掘や技術の応用・発展につながる取り組みを行い、事業終了後も当該技術を担う人材が育つような好循環を生むことを目指します。
2.事業内容
【1】ロボット・システムインテグレーションを加速する人材育成講座の実施
ロボット用ミドルウェア技術の体験をはじめ、入門コース、産業用ロボット応用コース、画像処理・AI技術の活用コースなどのロボット用ミドルウェア技術の体系的な習得を可能とする講義を提供します。オンライン・オンデマンド型の配信を行うことによって、時間・場所に縛られない参加を可能にします。2020年度は本講座の活動を紹介するとともに、ミドルウェア技術活用の事例やノウハウの共有を目標としたオンライン・シンポジウムを開催します。
【2】ロボット用ミドルウェア技術の普及を加速する人的交流の実施
外部有識者およびロボットメーカー、ユーザー候補企業などステークホルダー間の交流事業を通じて、人材育成講座のカリキュラムやロボット用ミドルウェア技術の普及活動に対する方針を決定します。また、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会※6のワーキンググループと連携して、本講座終了後もこの活動を継続するための組織化を行います。
【3】人材育成講座を支える周辺研究の実施
ロボットのシステムインテグレーター(SIer)※7やユーザー、研究者向けに、ロボット用ミドルウェア技術に関するAIなどOSS活用の先進開発事例を含んだ教材を開発するとともに、ロボット用ミドルウェア技術の維持・発展のため、ソフトウェアのメンテナンス作業や開発効率向上に関する定量評価・継続的な保守運用の仕組みを構築します。また、関連情報や海外動向の調査・公表も実施します。
3.講座の詳細(予定)
【1】キックオフシンポジウム
本講座の開講にあたり、下記の通り実施します。
- 開催日:2021年1月29日(金)
- 開催方法:オンデマンド(動画配信)
- 内容:(1)これまでの取り組み、ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクトの成果
- (2)ROSのアカデミアでの活用とビジネス応用
- (3)ROSのビジネス応用事例の紹介
- (4)本特別講座の実施計画
【2】人材育成講座(セミナー)
講座 | 形式 | 公開・実施時期(予定) | 内容 |
---|---|---|---|
体験コース | オンデマンド | 2021年1月29日 | インストール不要で、USBメモリ一本とパソコンがあれば実行が可能なROS体験ツールを使ったミドルウェア技術体験コース。とりあえず、短時間で体験してみたい人向けのコースです。 |
入門コース | オンデマンド | 2021年2月1日 | ロボット用ミドルウェアの概要や基本技術、それらを支えるOSSについて講義を行います。 |
OSS活用のガイドライン解説 | オンデマンド | 2021年2月1日 | OSSを利用する際に不安となるライセンスや決まりごと、注意点などを解説します。 |
市場化成果活用コース | オンライン、オンデマンド | 2021年2月初め配信予定 | ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクトの成果を活用するためのコースです。OSSを活用した移動ロボットによるSLAM※8活用、モバイルマニピュレーション、および3Dビジョンセンサーによるピッキングを取り上げます。 |
産業用ロボット応用コース | オンライン、オンデマンド | 調整中 | OSSを用いた産業用ロボット制御を行うためのインストールから軌道生成までを解説します。シミュレーションベースのコースと実機を利用するコースを予定しています。 |
画像処理・AI技術活用コース | オンライン | 調整中 | ミドルウェア技術を用いることにより導入が容易となる高度アルゴリズムの活用事例について学びます。画像処理や3次元距離計測を用いたロボット制御、最近注目を集めている産業用ロボットでのAI技術の活用事例を体験できます。 |
【3】受講方法
ロボット用ミドルウェア技術に興味をお持ちの方であれば無料で受講できます。初年度である2020年度は、体験コース、入門コースの導入編、シミュレーターベースでの産業用ロボット応用コースをオンデマンドまたはオンラインで実施します。オンデマンドの教材は、時間や滞在場所に縛られずに何度でも受講することが可能です。年度進行に応じて、移動ロボットアプリケーションなど、内容の充実を図ります。
なお、系統的に受講してもらうため、体験コースを除くすべてのコース受講にあたり受講登録をお願いしています。2021年1月15日から下記のサイトで登録可能です。
【注釈】
- ※1 ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト
- 事業名:ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト
事業期間:2015~2019年度
事業・プロジェクト概要: ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト
NEDO特別講座: NEDO特別講座 - ※2 システムインテグレーション(SI)
- ロボットを使ったシステムなどを構築する際に、ユーザーの業務を把握・分析し、ユーザーの課題を解決するようなシステムの企画、構築、運用サポートなどの業務を請け負うことです。
- ※3 ROS
- ロボット用のオープンソースのミドルウェアの一つです。2007年に米Willow Garage社がスタンフォード大学での研究をベースとして公開したものが起源で、ロボットソフトウェアの共同開発を世界規模で推進することを目指し、オープンソースソフトウェアとして開発、公開されています。
- ※4 オープンソースソフトウェア(OSS)
- 人間が理解しやすいプログラミング言語で記述されたソースコードを作成者が無償で公開し、作成者以外による利用や改変、再配布が許可されているソフトウェアのことです。
- ※5 ロボット用ミドルウェア
- ロボットの基本機能を実装したソフトウェアです。ソフトウェアモジュール間の通信インターフェース、デバイスコントロール(ドライバ)、多くのソフトウェアを管理するプラットフォームなどが含まれています。さらに動作シミュレーター、システム開発ツールなどが搭載されるなど進化を続けています。今後ミドルウェアの普及により、ロボット開発のハードルが下がることが期待されています。代表的なロボット用ミドルウェアはRTミドルウェア、ROSの2つです。
- ※6 ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会
- ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会
- ※7 システムインテグレーター(SIer)
- システムインテグレーションを行う業者や技術者をいいます。
- ※8 SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)
- 自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術です。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO ロボット・AI部 担当:大橋、和佐田 TEL:044-520-5244 E-mail:robo-marc@ml.nedo.go.jp
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、鈴木(美) TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp
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