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燃料電池に関する二つのロードマップと水電解の技術課題を整理した文書を公開
―2040年に向けた技術目標や普及シナリオ、技術課題などを提示―

2023年2月9日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

NEDOは、2020年度から「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」に取り組んでおり、このたび「FCV・HDV用燃料電池」および「定置用燃料電池」の2分野のロードマップを策定するとともに、「水電解」分野のロードマップ策定に向けて技術課題を整理した文書を取りまとめ、本日公開しました。

二つのロードマップでは、大型・商用モビリティ(HDV)向け燃料電池の2040年頃の製品目標や、定置用燃料電池の飛躍的な普及に向けて実施すべき開発課題などを新たにまとめました。また水電解技術の課題を整理した文書では、専門家へのヒアリングや各種実証などを通じて明らかとなった課題から解決優先度の高い課題を抽出し、整理しました。

NEDOは、今回設定した目標の達成や抽出した課題の解決に向けて、産学官で引き続き緊密な連携を図りながら、研究開発を加速させ、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。

1.概要

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、産学官が長期的視野を共有して技術開発に取り組むために、2005年から燃料電池・水素技術開発ロードマップを公開してきました。直近では、トラックや電車、船舶などへ燃料電池を適用する検討が世界各国で加速していることを受けて、大型・商用モビリティ(HDV:Heavy Duty Vehicle)向けロードマップを2021年度に策定※1しました。

しかし燃料電池・水素の技術開発を取り巻く状況は急速に変化しており、将来の普及シナリオや技術課題を整理し、業界関係者間共通の対話の土台を形成することが引き続き求められています。そこでNEDOでは、最新の政策・技術動向を踏まえたロードマップの改訂に向け、「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業※2」で、産業界や大学、研究機関などと議論を重ねてきました。

そしてこのたびNEDOは、「FCV・HDV用燃料電池」および「定置用燃料電池」の2分野のロードマップを策定するとともに、「水電解」分野のロードマップ策定に向けて技術課題を整理した文書を取りまとめ、本日以下のNEDOウェブサイトに公開しました。

サイト内リンクNEDO燃料電池・水素技術開発ロードマップ

また本日開催する「NEDO燃料電池・水素技術開発ロードマップ報告会」で本内容について報告します。

サイト内リンク「燃料電池・水素技術開発ロードマップ報告会」の開催

2.公開内容の主なポイント

【1】「FCV・HDV用燃料電池技術開発ロードマップ」

2021年度に公開した「HDV用燃料電池技術開発ロードマップ」では2030年頃の目標を設定したのに対し、今回は2040年頃に達成すべきHDV用燃料電池の製品目標(燃料電池システム出力密度が0.8kW/Lなど)を新たに設定しました。この目標を達成するために取り組むべき技術開発課題として、燃料電池用材料技術や生産技術、水素貯蔵技術、デジタルトランスフォーメーション(DX)技術の要素技術を整理しました。

  • 図1 FCV・HDV用燃料電池技術開発ロードマップの説明図
    図1 FCV・HDV用燃料電池技術開発ロードマップ(製品・システム)の抜粋

【2】「定置用燃料電池技術開発ロードマップ」

定置用燃料電池の飛躍的な普及を目指し、普及シナリオや製品開発課題、技術開発課題をまとめ、2017年に公開した「技術開発ロードマップ(家庭用燃料電池)」など二つのロードマップを改訂しました。市場ニーズやさまざまな用途に応じた燃料電池の実現に向けて、レジリエンス(強じん性)強化や再生可能エネルギーの調整力として活用するための技術課題を新たに設定するとともに、2030年以降の超高効率化に向けてプロトン伝導セラミックス燃料電池(PCFC)※3などの技術課題について詳しく設定しました。

  • 図2 定置用燃料電池技術開発ロードマップの説明の図
    図2 定置用燃料電池技術開発ロードマップ(業務・産業用燃料電池)の抜粋

【3】「水電解技術開発ロードマップ」の策定に向けた課題整理

水電解技術の普及拡大期を見据えたロードマップ策定を目指し、産業界や学術界との議論やヒアリング、各種実証などを通じて明らかとなった課題から解決優先度の高い課題を抽出しました。なお、課題抽出は、主な電解方式4種(アルカリ水電解[AWE]、プロトン交換膜水電解[PEMWE]、アニオン交換膜水電解[AEMWE]、固体酸化物電解[SOEC])、およびシステム(再エネ・系統電力・補機・ユーザー)の5分野で行いました。

  • 図3 水電解技術開発の方向性と課題抽出の視点の説明の画像
    図3 水電解技術開発の方向性と課題抽出の視点の抜粋

3.今後の予定

NEDOは、「FCV・HDV用燃料電池技術開発ロードマップ」については次年度以降、FCV用燃料電池の製品目標や詳細なコスト分析、ライフサイクルアセスメント(LCA)評価に基づくコスト目標、液体水素などの水素貯蔵技術に関する目標および技術課題の拡充を図る予定です。また、水電解技術については、具体的なコストや性能目標、目標達成のために各要素が満たすべき条件、技術開発課題の改訂などを検討し、「水電解技術開発ロードマップ」として取りまとめる予定です。

NEDOは、今回設定した目標の達成や抽出した課題の解決に向けて、産業界と大学、研究機関などと引き続き緊密な連携を図りながら、研究開発を加速させ、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。

【注釈】

※1 大型・商用モビリティ(HDV:Heavy Duty Vehicle)向けロードマップを2021年度に策定
※2 燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業
※3 プロトン伝導性セラミック燃料電池(PCFC)
セラミック電解質膜中をプロトン(水素イオン)が透過する燃料電池です。酸化物イオン伝導性の固体酸化物型燃料電池(SOFC)と比べて、低い作動温度で高効率な発電ができると期待されています。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO スマートコミュニティー・エネルギーシステム部 燃料電池・水素室
担当:新村、尾沼、栗田、平田、後藤
E-mail:fuelcell[*]ml.nedo.go.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:橋本、坂本、黒川、鈴木、根本
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。

  • 新聞、TVなどで弊機構の名称をご紹介いただく際は、“NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)”または“NEDO”のご使用をお願いいたします。

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