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NEDO、国内初となる「洋上風況観測ガイドブック」を公開
―円滑な洋上風況観測の実現で、洋上風力発電の導入拡大を目指す―

2023年4月6日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

NEDOは洋上風況調査手法の確立において、今まで日本国内では整理されていなかった洋上風力発電所の事業計画や風車設計に必要な情報を、風況観測の実施者向けにまとめた「洋上風況観測ガイドブック」を公開しました。本ガイドブックは、「着床式洋上ウィンドファーム開発支援事業」にて策定されたもので、従来の観測手法よりも低コストで精度の高い洋上風況観測手法を確立しました。本事業を通じ、洋上風力発電の導入拡大が一層期待されます。

図1 風況観測の模式図の画像
図1 デュアルスキャニングライダーによる風況観測の模式図
(左:陸域からの風況観測の図、右:真上から見た図)

1.概要

洋上風力発電所の事業計画の検討においては、「事業性の検討」「風車設計条件の検討」「電気事業法に基づく工事計画届などの許認可の取得」のために、精度の高い風況データを取得することが重要です。現在、洋上の風況観測において最も精度の高い方法は、洋上風況観測マスト※1による観測と言われています。しかし、洋上での風況観測マストの設置は、一般的に地元との調整や許認可手続きに長い時間を要するほか、多大な建設コストを要するため、代替として、ドップラーライダー※2などのリモートセンシング機器を活用して陸から観測する手法の確立が国内外で望まれています。一方、現状のリモートセンシング技術では、風速の乱れ成分の観測や沖合での風速の鉛直分布などを観測する手法はまだ確立されていません。また、浮体式洋上風力発電を想定した水深の深い海域でも、洋上に浮かべたブイに機器を搭載するタイプの浮体式風況観測システムによる観測手法の確立が求められています。

これらの課題を解決するために、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「着床式洋上ウィンドファーム開発支援事業(洋上風況調査手法の確立)※3」では、青森県むつ小川原港や秋田県能代港で実観測を行いました。風況観測マストや、上空にレーザーを照射するリモートセンシング機器である鉛直ライダーによる計測のほか、測定地点を照射するスキャニングライダーでは、特に別地点からの2台を組み合わせることで、正確な風速と風向、風の乱れを測り、日本の海域における洋上風況の低コストな観測手法を確立しました。

今般、本成果や国内外の最新の知見も参考としながら、洋上風力発電所の事業計画および風車設計に必要な風況観測を実施する実務者が参照できる情報を日本国内で初めて整理し、「洋上風況観測ガイドブック」にまとめ、本日、ウェブサイトで公開しました。

本ガイドブックは、以下のリンクよりダウンロードできます。

サイト内リンク洋上風況観測ガイドブック

本ガイドブックは国内外の洋上風況観測に関する最新研究、ガイドライン、国際規格などを参考としながら、風況観測実施者が実務で参照する資料として位置付けられています。

2.ガイドブックの内容

ガイドブックで取りまとめられた主な内容は以下の通りです。第2章~第7章では具体的な観測方法について説明しています。

  • 第1章:本ガイドブックの位置付け及び洋上風況観測に関する概説
  • 第2章:風況観測及び風条件の評価
  • 第3章:洋上風況観測マストによる観測
  • 第4章:デュアルスキャニングライダーによる洋上観測
  • 第5章:シングルスキャニングライダーによる洋上観測
  • 第6章:鉛直ライダーによる洋上観測
  • 第7章:フローティングライダーシステムによる洋上観測
  • 第8章:観測データ欠測時の補完及び精度検証
  • 第9章:レポートの作成にあたっての記載事項

3.今後の予定

本ガイドブックによって「洋上風力発電所の計画及び開発に必要な風況観測」が整理されたことで、2021年10月22日に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」で「再生可能エネルギー主力電源化の切り札」とされている洋上風力発電の一層の導入拡大が期待されます。

また、今後は本ガイドブックの英訳版を作成予定で、日本の洋上風況観測技術が世界でも活用されることが期待されます。

【注釈】

※1 洋上風況観測マスト
洋上の風速、風向を計測するために設置する自立型のマストです。
※2 ドップラーライダー
光(近赤外線)により上空あるいは水平方向の観測目標地点の風向風速をリモートで測定する装置で、各種気象観測、風力発電の事業性判断、航空機の安全運航のための監視などさまざまな分野での活用が可能です。
※3 着床式洋上ウィンドファーム開発支援事業(洋上風況調査手法の確立)
  • :風力発電等導入支援事業/着床式洋上ウィンドファーム開発支援事業/着床式洋上ウィンドファーム開発支援事業(洋上風況調査手法の確立)
  • 事業期間:2019年度~2022年度
  • サイト内リンク風力発電等導入支援事業

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 新エネルギー部 担当:大和田、三枝、依田、酒井
TEL:044-520-5270

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:根本、坂本、橋本、鈴木、黒川
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。

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