バッテリートレーサビリティプラットフォームとCatena-Xとの相互接続実証に成功しました
―「自動車業界向けデータ共有における、相互運用性の検証に関する覚書」の実証に貢献―
2025年3月31日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
株式会社NTTデータグループ
NEDOの「産業DXのためのデジタルインフラ整備事業」にて、株式会社NTTデータグループは、独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)とCatena-X Automotive Network e.V.の間で締結された「自動車業界向けデータ共有における相互運用の検証(PoC)に関する覚書」に基づき、ウラノス・エコシステムのもと構築された「バッテリートレーサビリティプラットフォーム」と「Catena-X」との技術的な相互接続実証(以下、本実証)に成功しました。
本実証により、異なるアーキテクチャによる、データスペース間での接続における、「認証方式」「プロトコル」「データモデル」などに関する技術課題を明らかにしたほか、中間層を設けることで、双方のアーキテクチャに影響を与えずデータを相互に交換できる仕組みの実現性を確認しました。
今後、NTTデータグループは、データスペース間の相互接続の確立に継続的に取り組み、企業や業界、国境をまたいだ円滑・安全なデータ流通の実現による、豊かな社会を目指します。
1.背景
カーボンニュートラルの達成や資源循環型社会の実現に代表される社会課題やサプライチェーン断絶への対応といった経済課題の解決に向けては、企業や業界、国境をまたいで安全にデータを流通できる仕組みの構築が必要となります。こうした仕組みを実現するために、「データスペース」※1と呼ばれるデジタルインフラを構築する動きが、世界各国・地域で加速しています。
日本では、経済産業省やIPA、NEDOなどが中心となり、「ウラノス・エコシステム」※2の実現に向けた活動が推進されているほか、欧州では、Catena-X Automotive Network e.V※3による自動車業界データスペース(Catena-Xデータスペース)の稼働をはじめとし、複数の産業分野でその構築が進められています。また、2024年4月には、IPAとCatena-X Automotive Network e.Vとの間で、両組織が推進するデータスペース同士の相互運用に向けた共同作業に関する覚書※4が締結されました。
NTTデータグループは、2022年に企業間データ流通プラットフォームの実現構想を発表し、国内外でのデータスペースの社会実装に継続的に取り組んできました。その活動の一環として、ウラノス・エコシステムの実現に関するNEDOの公募事業において、サプライチェーンデータ連携基盤の開発・実証を実施※5しているほか、その先行ユースケースとして、電動車向けバッテリーに関する業界横断エコシステムとしてバッテリートレーサビリティプラットフォームを構築し、提供を開始しています※6。
2.実証の概要
NTTデータグループは、IPAとCatena-X Automotive Network e.Vの覚書に基づき、ウラノス・エコシステムの実現に関するNEDOの事業を通じ、バッテリートレーサビリティプラットフォームとCatena-Xとの相互接続実証を実施しました。本実証により、異なるアーキテクチャによる、データスペース間でのデータ連携にあたっては、認証方式・プロトコル・データモデルの差分を解消することが大きな課題であることを明らかにしました。さらに、その解決方法として検討した中間層を設けるアプローチに基づき、双方データスペースで取り扱われる製品カーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products。以下、CFP)データを相互に交換する仕組みを構築し、その有用性を確認しました※7。
表 本実証の概要一覧
実施期間・主要な工程 |
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実証の内容 |
実証用環境を構築し、二つの業務シナリオを想定した双方向のデータ交換を実施。 Catena-Xを利用している欧州の完成車メーカが、バッテリートレーサビリティプラットフォームを利用している日本の部品サプライヤからCFP情報を取得する。 バッテリートレーサビリティプラットフォームを利用している日本の完成車メーカが、Catena-Xを利用している欧州の部品サプライヤからCFP情報を取得する。 |
実証用環境の構成 | バッテリートレーサビリティプラットフォームとCatena-Xとの間に、「認証方式」「プロトコル」「データモデル」を相互に変換する中間層を設置し、双方のアーキテクチャに影響を与えず相互のデータ交換を行う環境を構築(図)。 |
主要な成果 |
異なるアーキテクチャによる、データスペース間でのデータ連携方式として、相互接続部に、認証方式・プロトコル・データモデルの差分を吸収する中間層を配置するアプローチが有効であることを確認した。 アーキテクチャおよび運営モデルが互いに異なるデータスペース間での、国際データ連携の実現に向け、世界的に先進的な実証を成功させた。 |

図 実証用環境の構成
3.今後の予定
本実証を通じて、技術面での課題とその解決方針を明らかにしたほか、データスペース間相互接続の確立に向けて、制度や運用面などに関して課題として扱うべき複数の事項があることを、ウラノス・エコシステムとCatena-X双方の共通認識とすることができました。NTTデータグループは、関係する政府組織や業界団体などと連携しながら、データスペースの相互接続の商用化に向けて継続的に取り組み、国際間を含むデータ連携を実現することで、社会課題の解決に貢献します。
【注釈】
- ※1 データスペース
- 複数の組織が互いに信頼性を確保しながらデータを自由に流通させるための制度と、それを実現する技術を組み合わせて基盤を構築し、新しい経済・社会活動のための空間を形成する取り組みです。
概要 - ※2 ウラノス・エコシステム
- 経済産業省が推進する、企業や業界、国境をまたぐ横断的なデータ連携基盤の構築を目指す活動(イニシアチブ)の総称です。
概要 - ※3 Catena-X Automotive Network e.V.
- Catena-Xは、欧州の自動車関連企業等が中心となって立ち上げた団体であり、自動車バリューチェーン全体でのデータ連携と利活用を促進するデータスペースの構築と発展を推進しています。
- ※4 共同作業に関する覚書
- IPAとCatena-X Automotive Network e.V.は、2024年4月、自動車業界向けデータ共有エコシステム間の相互運用性を実現し、最終的には各自動車業界相互間でのデータ共有・利活用の実現を目指すことを目的として、両者の相互運用性の実現に必要な要件を評価し、検証(PoC)を実施することを合意しました。
(参考)IPA「IPAとCatena-X、自動車業界向けデータの相互運用を目指し覚書を締結」
(参考)Catena-「IPA and Catena-X sign an MOU on Automotive Industry Data Sharing Interoperability」 - ※5 NEDOの公募事業において、サプライチェーンデータ連携基盤の開発・実証を実施
- NTTデータグループは、2023年10月より、ウラノス・エコシステムに関する公募事業である「産業DXのためのデジタルインフラ整備事業」(JPNP22006)の委託事業として、サプライチェーンデータ連携基盤を開発・実証しています。
(参考)NEDO「「産業DXのためのデジタルインフラ整備事業/サプライチェーンマネジメント基盤に関する研究開発」に係る実施体制の決定について」
(参考)NTTデータグループ「企業や業界、国境をまたぐデータ連携基盤構築に向け、「ウラノス・エコシステム」に関する公募事業に採択」 - ※6 バッテリートレーサビリティプラットフォームを構築し、提供を開始しています
- 株式会社NTTデータは、電動車向けバッテリーに関する業界横断エコシステム「バッテリートレーサビリティプラットフォーム」を、2024年5月16日より提供開始しています。
(参考)NTTデータ「産業データの安全な流通を実現する連携プラットフォームの提供開始」 - ※7 仕組みを構築し、その有用性を確認しました
- (参考)IPAニュースリリース(2025年3月31日)
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 半導体・情報インフラ部 データプラットフォームチーム 担当:千田、野口、坂間、加藤(輝)
TEL:044-520-5211 E-mail:ouranosecosystem[*]ml.nedo.go.jp
NTTデータグループ 技術革新統括本部 Innovation技術部 担当:金子、関、サンダ
E-mail:trusted-ds[*]kits.nttdata.co.jp
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 経営企画部 広報企画・報道課 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp
E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。
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