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知っておきたい基礎知識
~政府系機関におけるスタートアップ支援とは~

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政府系機関のスタートアップ支援の類型や補助金・助成金のメリットをわかりやすく解説しています。

1.スタートアップとは

スタートアップとは「革新的なビジネスモデルを有し、短期間での急成長を目指す」企業のことです。昨今、スタートアップは、新たな社会課題を解決する主体として、経済成長を果たすうえで欠かせない存在になっています。そのため、ベンチャーキャピタルなどの民間資本だけでなく、世界各国の政府がスタートアップ支援に力を入れています。我が国においても、国内スタートアップへの投資額は、2013年には約900億円でしたが、2022年には約9,700億円となり、10年で約10倍にまで成長しています。

日本政府も2022年に「スタートアップ育成5か年計画」を策定し、「スタートアップ投資額を5年後に10倍を超える額にする」「ユニコーン(時価総額1,000億円超の未上場企業)を100社創出する」といった大きな目標を掲げました。現在、この野心的な目標に沿って、各省庁やNEDOを含む政府系機関がさまざまなスタートアップ支援を展開しています。ここでは、これらスタートアップ支援の全体像をわかりやすく解説します。

2.政府系機関のスタートアップ支援の類型、支援策

政府系機関では、起業家やスタートアップに対して、さまざまな支援を展開しています。ここでは、これらの支援を7つの類型に分けてご紹介します。

(1)補助金・助成金

補助金や助成金とは、政府系機関が政策目的に沿って条件を満たすスタートアップに交付する、返済義務のない資金です。補助金・助成金を運営する省庁や政府系機関は、スタートアップから提出された事業計画を審査し、補助金・助成金の交付先を決定します。

補助金・助成金の支払いには、以下の2パターンあります。

  • 〔1〕助成期間中、必要があると認められた場合に、事業の実施に要する経費を支払う「概算払」
  • 〔2〕助成期間終了後(確定検査後)に経費を支払う「精算払」
政府系支援策の例(補助金・助成金)

(2)融資

融資とは、金融機関から事業資金を借り入れることで、「デット・ファイナンス」の一種です。政府系機関では、新規開業支援・スタートアップ支援向けの低金利の融資を提供しています。融資の場合、借入先が経営に関与することはありませんが、借り入れた資金は、利用する融資サービスの決まりに則った金利・期間で返済する必要があります。

政府系支援策の例(融資)

(3)出資

出資とは、株式(エクイティ)を発行して資金を集めることで、「エクイティ・ファイナンス」とも呼ばれます。原則としてスタートアップは、出資者である投資家やベンチャーキャピタルに資金を返済する義務を負いません。その代わりに出資者は、出資先のスタートアップの株式を所有し、会社経営に対する発言権を獲得し、経営に関与することができます。基本的に出資は、ベンチャーキャピタルや事業会社などの民間資本が実施する手法ですが、日本政策投資銀行(DBJ)や国際協力銀行(JBIC)などの政府系機関も行っております。

政府系支援策の例(出資)

(4)相談・メンタリング・施設提供

政府系機関などが設ける相談窓口では、利活用できそうな補助金や経営面の課題などについて、アドバイス機会を無料で提供しています。窓口によって相談できる内容が異なるため、事前に確認をしておくとよいでしょう。また、メンタリング支援としては、起業に関する基礎知識を学べるセミナーや、起業経験者・分野の専門家などによる伴走支援を提供する機関もあります。メンタリング支援は、補助金・助成金事業の付帯サービスとして提供されることもあります。

政府系支援策の例(相談・メンタリング)

物理的な支援では、起業志望者や起業から間もない人向けに、オフィスとして無料・低額で使える「インキュベーション施設」を提供しています。

政府系支援の例(インキュベーション施設)

(5)知財支援

知財支援とは、知的財産の専門家がスタートアップの経営・事業の知財戦略を支援するものです。無料の相談窓口や産学連携の支援、創業期の伴走支援などがあり、いずれも独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)などが実施しています。市場競争力に直結するスタートアップの知的財産は、早期から対策していくことが肝要です。

政府系支援策の例(知財支援)

(6)海外展開支援

海外進出を目標に定めるスタートアップ向けには、海外での需要調査や現地情報の提供、現地企業や投資家とのネットワーキング支援といった、海外展開支援もあります。基本的には、日本に拠点を置くスタートアップを対象としています。

政府系支援策の例(海外展開支援)

(7)マッチング

政府系機関のマッチング支援は、個社紹介ではなく、企業同士あるいは企業と研究者が交流できるプラットフォームの運営である場合が多いです。そのほか、補助金・助成金に採択されたスタートアップ向けに、展示会への出展補助なども行っています。

政府系支援策の例(マッチング)
図表1.主なスタートアップ支援の特徴と支援策例
類型 特徴 スタートアップ支援策例
補助金・助成金
  • 返済義務がなく、株式発行も不要
  • 政策ベースのため、公募が不定期
  • Go-Tech事業(経産省)
  • NEP、DTSU(NEDO)
融資
  • 自由に経営できる
  • 金利つきの返済義務がある
  • 新規開業・スタートアップ支援資金(JFC)
  • A-STEP実装支援(返済型)(JST)
出資
  • 返済義務がない
  • 経営に株主の意向が入る
  • ベンチャー投資(DBJ)
  • 出資(JBIC)
相談・
メンタリング・
施設提供
  • 無料でいつでも受けられる
  • Plus One相談窓口(NEDO)
  • スタートアップ挑戦支援事業(中小機構)
知財支援
  • 基本的に無料支援
  • 採択数(利用可能者)が少ない
  • スタートアップ知財支援窓口、公募型の知財支援(INPIT)
海外展開支援
  • 海外調査、企業や投資家の紹介も可能
  • 資金提供は基本なし
  • グローバル・アクセラレーション・ハブ(JETRO)
  • 中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA)
マッチング
  • 個社紹介ではなく、企業同士あるいは企業と研究者が交流できるプラットフォーム
  • 補助金・助成金に採択されたスタートアップ向けに、展示会への出展補助などもある
  • J-GoodTech(中小機構)
  • 若手研究者産学連携プラットフォーム(NEDO)
  • J-BRIDGE(JETRO)

出典:各種情報をもとにNEDO作成

3.政府系機関が行う補助金・助成金を受ける2つのメリット

ここからは、補助金・助成金を受けるメリットや注意点についてお伝えします。

メリット(1)経営に影響を受けづらい資金を得られる

補助金・助成金は返済・株式発行が不要な資金です。また、補助金の運営主体である国や自治体などが経営権を握ることはないため、創業者株が希薄化してしまう心配がありません。

メリット(2)信用度の向上につながる

政府系機関や自治体が提供するスタートアップ支援、なかでも補助金・助成金事業に採択されることは、スタートアップの社会的な信用度の向上にもつながります。政府系機関が提供する補助金・助成金事業に採択されたことで、社会的に一定の信頼を得て取引先が広がった例もあります。

4.国やNEDOのスタートアップ支援を活用し、日本を代表する企業に!

近年、官民のスタートアップ支援が非常に充実してきています。無料のインキュベーション施設や専門家への相談機会を活用することで、起業や経営に関する悩みや課題を解決し、最短ルートで起業家への歩み・成長を目指してください。さらに補助金・助成金を活用すれば、しっかりと研究開発に取り組んで市場競争力の地力を養うことができます。

ぜひ上手に活用して、世界に羽ばたくスタートアップを目指していきましょう。

図表2.政府系のスタートアップ支援策サイト(一例)
関連サイト   URL
スタートアップ育成ポータルサイト 内閣官房 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/su-portal/index.html
スタートアップ支援策 経産省 https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/index.html
文部科学省におけるスタートアップ支援施策 文科省 https://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/startup/mext_02343.html
起業にお悩みの方へ 中小機構 https://www.smrj.go.jp/venture/index.html
StarT!Ps from NEDO NEDO https://www.nedo.go.jp/activities/startups/index.html
J-Startup 経産省 https://www.j-startup.go.jp/

出典:各種情報をもとにNEDO作成

最終更新日:2025年3月31日