中国におけるドローンの制度整備と利用の現状
中国は、世界最大のドローン製造大国ですが、ドローンの航空管制や製造に関する制度整備・標準体系の構築も積極的に進められています。
中国における
- ドローンの政府計画・制度整備の経緯や現状、
- ドローンのテスト飛行場やクラウド管制といった関連サービス、
- 高圧送電巡視や農業での利用といったドローン活用の状況
についてまとめました。
- 中国におけるドローンの制度整備と利用の現状 (1.9MB)
- 中国では「ドローン」を「無人機」「無人操縦機」と呼ぶため、本資料もその呼称にならっている。
本レポートの概要
1.中国政府による無人機に関する航空管制・産業振興の計画
2015年12月に民用航空局が「軽小型無人機運航規程(試行)」で無人機に関する航空管制やパイロットなどに関する規定が発表されて以降、無人機の計画策定や制度整備が急速に進展している。
無人機の計画や制度整備は民用航空局と工業信息化部が競い合って制定しているが、両省が必ずしも連携が取れているものでもない。2018年1月には国務院(≒内閣)が主導して無人機の航空管制から製造まで制度的にカバーする「無人操縦航空機飛行管理暫定条例」の案文がパブコメにかけられたが、2020年4月時点で未施行。
無人機に関する政府計画や制度では、いち早く制度整備を行うことで中国製無人機や関連サービスで中国が優位に立とうとする意図も見える。
- 工業信息化部の計画では2020年の目標として「消費者用無人機技術で世界リードを維持」「世界的影響力をもつ無人機企業を2~5社育成」などが挙げられている。
- 民用航空局の民間用無人航空機操縦者管理規定では、同規定の目的を「ICAOで検討中の無人機パイロット制度に中国の制度の採用を働きかけることを最終的な目的とする。」と規定。
2.無人機の飛行管理や機体に関する制度
中国の無人機の飛行管理や機体の制度はおおむね以下の通り。
3.無人機の周辺サービス
(1)無人機クラウドサービス
2015年12月の「軽小型無人機運航規程(試行)」によって、無人機の飛行管理を行うクラウドサービスが規定されたことを受けて、多くの事業者が参入している。
(2)飛行テスト場
2017年に、民用航空局などが支援する「民用無人機試験飛行運営基地」が上海市に開設された。飛行空域は200平方km、飛行高度150m以下で、無人機クラウドとしてAOPAのU-Cloudを利用する。
2017年年末には、瀋陽にも飛行テスト場が開設され、飛行空域3,000平方キロ、滑走路等を備える。
4.無人機の産業利用の広がり
産業向け無人機の中では、(1)植物保護(農業)、(2)電力設備監視(高圧送電点検)、(3)防犯・監視が多いとされる。
(1)植物保護
各省が農業の自動化に熱心で、福建省では農業用無人機に3分の1の補助を出すなどしている。
農業用無人機の極光科技によれば、同社は5割のシェアをもち、これまで5万機の農業用無人機を販売。
(2)電力設備監視
国家電網と南方電網が主導して、2009年ごろから高圧送電設備の監視に無人機を用いる試みが進展。
国家電網は無人機電力線監視の社内標準を整備するなどして作業を標準化。鉄塔1基の巡視には、人の作業員では1~2時間かかるが、無人機では5~10分程度に短縮している。
本資料は、NEDO北京事務所の職員が中国におけるドローンの制度整備と利用状況の把握のための参考資料として収集したものであり、当機構の意見を代表するものではない。
情報の利用に当たっては、適宜原典を参照されたい。
本資料の利用によって生ずるいかなる不利益も、当機構は責任を負わない。
最終更新日:2020年5月1日
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