Project

次世代レーザー加工技術で


「光ものづくり」時代を拓き


世界トップシェアを奪還する。

Project Member

KAKINUMA Ryo

IoT推進部 主任 | 2016年入構
地球・環境資源理工学専攻

金属資源の循環技術として、排水に含まれる有価金属を抽出する研究に取り組んだ。研究一筋の道を進むか、幅広くテクノロジーの可能性を探る仕事に就くか人生の岐路に立ったとき、NEDOに出合った。
#好きな言葉は「Time is Life」 #「Time is Money」ではなく #時間を自分に投資する #趣味は指が疲れるまでピアノを弾くこと

担当業務

省エネルギーで革新的に高性能な半導体レーザー技術開発やIoT技術の融合・連携を用いた次世代を担うレーザー加工技術開発の推進役として、研究機関や民間企業、行政機関をつなぐ役割を果たす。

世界トップシェアを奪還せよ。
次世代レーザーにかける狙い

かつて日本はレーザー技術分野での大型研究開発プロジェクトが奏功し、レーザー加工機システムで圧倒的な世界市場のシェアを独占していた。しかし、新しく高輝度・高出力なファイバーレーザーの技術が急速に進展し、加工用のレーザーでは日本は海外勢の後塵を拝し、以前ほど世界市場に食い込めていない厳しい実状がある。そこでNEDOでは世界トップシェアを奪還すべく、「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクトとして、半導体レーザーなど次世代レーザーの技術開発やIoT技術の融合・連携による革新的なレーザー加工技術開発に幅広く取り組んでいる。これまで、世界に例を見ない高出力のピコ秒レーザー加工機など、研究開発の順調な成果が見えてきている。成果の普及に大事なのは、実用化や事業化への橋渡しだ。その役目として、東京大学を中心とした、60以上の研究機関や民間企業が参画する「TACMI(たくみ)コンソーシアム」との連携する仕組みを用意した。

プロジェクトマネージャーを務める柿沼遼はTACMIについてこう語る。「TACMIコンソーシアムでは「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクトで開発中の最先端のレーザー加工機システムが利用できます。レーザーを用いたものづくりは自由な形状に切断や穴あけができ、新たな加工や技術を可能にします。一方で、レーザー加工は波長、パルス幅、パルスエネルギーなどの設定の自由度が高く、パラメーターの組み合わせは無限。その設定は長らく技術者の経験と勘に頼っていました。ここでは、いわば“職人技”というべきパラメーターの組み合わせをデータベースとして蓄積し、参画企業が活用できるプラットフォームを提供していく場にしたいと考えています」 「Technological Approaches toward Cool laser Manufacturing with Intelligence」を意味するTACMIは「匠」にも相通ずる。日本が得意とする繊細なものづくり技術をIoTでデータ化して、汎用性の高いテクノロジーの基盤を創り上げようというのがNEDOの目指すところだ。

日本のレーザー技術水準を
一気に押し上げるミッション

ものづくりの世界では、大きく分けて「垂直統合」と「水平分業」という二つの潮流がある。垂直統合とは、開発から生産、販売と、川上から川下まで一社が一貫して行うもの。一方、水平分業とは、複数の企業が技術開発、原料調達、部品生産など得意分野を持ち寄ってお互いに協力し合うビジネスモデルである。NEDOが目指すのは、水平分業の発想に近い。プロジェクトマネージャーを務める柿沼はこう話す。「各企業は市場においてはライバル関係になることもあります。本来ならば、自社の技術や情報を出すのに躊躇しますが、TACMIという場があることで、お互いの技術や経験を持ち寄って、日本のレーザー技術を底上げしようと目標を共有に向かっていくことができます。我々NEDOはその場とチャンスを提供することが使命と考え、日々さまざまな人に会い、つながりを広げています。『NEDOの存在があったおかげで新しい技術開発のめどがついた』などと言っていただけると、うれしいですね」

日本のレーザー技術水準を
一気に押し上げるミッション

世界のものづくりは、従来の機械加工がレーザー加工に置き換わってきている。穴あけや切断、溶接といった技術だけでなく、表面改質(ピーニング)や成型(フォーミング)、表面クリーニングなど、あらゆる加工にレーザーの応用技術が期待されている。「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクトにおける研究開発は2020年度に完了し、その後は実用化に向けて新たなステージに突入する。 「研究開発で終わらせず、実用化に向けて外部の評価委員などを交えて議論を重ね、次のステップへと導くのがこれからの私の役割。2020年度は一つのピリオドではありますが、2025年ぐらいには日本のレーザー技術が世界で強い存在感を放つまでになるだろうと考えています」

Time is Life. ――時間は人生そのものであり、今の時間をいかに使うかで、未来の人生が決まる。柿沼が大切にしている言葉だ。レーザー技術開発においても同じことが言える。未来の日本のものづくりのために、“今”やらなければならないことがある。その思いを胸に一日一日、進歩を着実に重ね、プロジェクトを成功に導きたいと考えている。