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インドのラストマイル交通向けIT運用支援システム構築を完了、実証運転を開始
―利便性と輸送効率の向上による交通渋滞改善、GHG排出量削減を目指す―

2023年10月17日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
パナソニック ホールディングス株式会社

NEDOは「エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業」(以下、本事業)で、インドのデリー準州政府交通局と、出発地から最寄り駅までの区間と最寄り駅から目的地までの区間(ラストマイル交通)で乗客の利便性と輸送効率の向上を目的とした電動車両(Eモビリティ)向けIT運用支援システム(以下、本システム)の実証事業に取り組んでいます。この一環で本事業の助成先であるパナソニック ホールディングス(株)は、現地協力企業のETO Motors Private Limited(ETO Motors)と連携して本システムの導入を完了し、10月より、実証運転を開始しました。

実証運転では、出発地や目的地とデリーメトロのカルカジ・マンディール駅および近郊3駅(オクラNSIC駅、ネルー・エンクレイブ駅、ネルー・プレイス駅)との間をつなぐラストマイル交通向けのEモビリティを対象に、本システムを導入・運用することで、利便性と輸送効率の向上を検証します。本実証事業の成果の社会実装を通じてラストマイル交通向けEモビリティとデリーメトロの利用増加を実現し、交通渋滞の改善や温室効果ガス(GHG)排出量の削減を目指します。

なお、これに併せて本日、デリー市内のコンベンションセンターで関係者による運転開始式を開催しました。

本システムの運用イメージと実証運転のエリアを表した画像
図1 本システムの運用イメージと実証運転のエリア

1.背景

インドは、急激な経済成長に伴い、主に都市部で交通渋滞や、それに伴う大気汚染が深刻な社会問題となっています。そこで、環境負荷の低いEモビリティ※1の普及施策の実施やメトロ交通網の拡張が進められています。さらにメトロのような公共交通の利用促進のためには、ラストマイル※2交通の整備も併せて行うことが重要です。

しかし現状、天然ガスで走る三輪車両(オートリキシャ)やEモビリティの利便性・信頼性が低いため、ラストマイル交通は十分に活用されておらず、自家用自動車やタクシー、ライドシェアサービスなどで乗車地点から目的地へ直接移動する割合が高くなっています。これにより、公共交通とラストマイル交通を利用するときに比べ大幅に道路の交通量が増加し、深刻な渋滞や大気汚染を招くという負のスパイラルに陥っています。

2.実証事業の概要

このような背景のもと、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)とインドのデリー準州政府交通局は、ラストマイル交通における乗客の利便性と輸送効率の向上を目的としたEモビリティ向けIT運用支援システムの実証事業※3を実施するため、2022年12月に協力合意書(LOI:Letter of Intent)を取り交わしました。その後、本事業を実施する助成先のパナソニック ホールディングス株式会社(パナソニックHD)と現地協力企業でEモビリティの製造・運営事業者であるETO Motors Private Limited(ETO Motors)は、プロジェクト合意書(PA:Project Agreement)を締結しました。

これを受けパナソニックHDとETO Motorsは、デリーメトロのカルカジ・マンディール駅周辺で、ラストマイル交通(Eモビリティ)向けに本システムの実証事業に着手※4しました。実証運転の対象は、出発地や目的地とカルカジ・マンディール駅および近郊3駅(オクラNSIC駅、ネルー・エンクレイブ駅、ネルー・プレイス駅)とをつなぐEモビリティです。本システムを適用・運用することで、乗客の利便性と輸送効率の向上を図り、Eモビリティとデリーメトロの利用者増加につなげ、交通渋滞の改善、GHG排出量の削減を目指します。

本システムは、オンデマンド運行管理、配車アルゴリズム、バッテリーマネジメントの機能を持つクラウドシステムです。Eモビリティ用充電器利用の認証・情報(充電ログ)やEモビリティの走行ログ・運行ログ・電池データをモバイル通信でクラウド上に取り込み、オペレーター(車両運用事業者)・ドライバー・乗客向けの三つのアプリを介して、以下のような機能を提供します(図1)。

  • (1)オペレーターアプリ:車両管理、運用管理、電池管理
  • (2)ドリ:需給マッピング、高精度電池残量表示、キャッシュレス決済
  • (3)乗リ:空き車両情報、乗車予約、キャッシュレス決済

パナソニックHDは、本事業の着手後、Eモビリティを活用したラストマイル交通向け乗客サービスの基本データ(Eモビリティの運行状況や充電時間、充電量など)の収集と本システムの構築を並行して進めてきました。

まずは本システム導入前の基本データを収集するために、ETO MotorsとともにEモビリティの運用管理・充電ステーションの設営などのサービス環境を整え、2023年5月から段階的に乗客サービスを開始しました。その際、ドライバーが乗客数や移動距離、時間など、Eモビリティの運行状況や充電時間、充電量などのデータを紙に記録し、オペレーターが基本データとして集計してきました。

一方、本システムの構築に関しては、その根幹となる上記(1)から(3)の三つのアプリについて、個々の機能をカスタマイズし、不要機能を削除、新機能を追加するとともに、アプリ間の連携調整・改善の試運転を行いながら実施してきました。

3.今後の予定

実証運転で取得されるデータと、本システム導入前に取得した基本データの比較により、乗客数の増加や運行効率の向上(車両稼働時間増加、到着時間短縮)、運用コスト削減(オペレーターの省人化、バッテリー活用時間向上)などを検証するとともに、効果をより高めるため本システムの改良・最適化を行っていきます。

本事業の取り組みにより、ラストマイル交通における乗客の利便性と輸送効率の向上を図ることで、ドライバーの収益増加などの効果が見込まれます。また、ラストマイル交通向けのEモビリティやデリーメトロの利用を活性化することにより、交通渋滞や大気汚染の改善、GHG排出量の削減※5を目指します。

4.運転開始式

本日、デリー市内のコンベンションセンターにて、多数の関係者出席のもと、Eモビリティ向けIT運用支援システム実証の運転開始式を開催しました。運転開始式では、各者のスピーチやパナソニックHDとETO Motorsから本実証事業の概要や本システム導入により期待される効果などを紹介しました。

【注釈】

※1 Eモビリティ
Electro-Mobilityの略語で電動車両を意味します。電気自動車(EV)、電動バイク、電動バス、電動トラックなどの総称です。
※2 ラストマイル
Last One Mile(最後の1マイル)の略で、交通分野では、最寄り駅から目的地までの区間を意味します。本リリースでは出発地から最寄り駅までの区間(First One Mile:最初の1マイル)も含めて用いています。
※3 実証事業
※4 実証事業に着手
※5 GHG排出量の削減
本実証事業においては本システム導入により、自家用自動車やタクシー、ライドシェアサービスなどの利用による乗車地点から目的地への直接移動が減少し、メトロ交通とEモビリティを利用した効率的な移動が増加することが期待されており、ラストマイル区間における二酸化炭素(CO2)排出削減量は年間260トン程度(Eモビリティ40台使用時)を見込んでいます。

5.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO スマートコミュニティ・エネルギーシステム部 担当:川上、川北、櫻井 TEL:044-520-5274

NEDO 国際部 担当:桐生、川田 TEL:044-520-5190

パナソニックHD モビリティ事業戦略室 E-mail:mobility_info[*]ml.jp.panasonic.com

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、瀧川、根本、山脇、柿澤
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。

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